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触れて絡めて解け合って、交わり高まる熱にあらがえないまま、ほとばしる信号に機体を委ねて意識がはぜる。
黒く塗り潰されて混濁に落ちる感覚は、しかしとても優しい感覚だった。





「博士? 一体何をしていらっしゃるんです」
あれ、今日はフラッシュのフルメンテでしたか?
きょとんとして瞬きするメタルマンが、ワイリーの白い背中に問い掛けた。
メタルマンの見る先、ワイリーの前には白く丸いポッドがあり、その中には六番目の機体が眠るようにいた。
否、眠るようにおとなしくなったのはついさっきで、そうなる前はまるで電気でも
流されているのかと見紛うほどびくびくと痙攣していた。
このポッドに誰かが入るのは、深刻な破損をした場合か、若しくはフルメンテの場合かであった。
特に破損などしていないフラッシュマンが入っているための問いだったが、しかしまだ
彼のメンテの日程ではなかったはずだとメタルマンは回路を走らせる。
「いや? おぬしのスケジュールは間違っておらんぞメタルよ」
サングラスを上にあげながら、長兄機体の思考を読んだようにワイリーが答えた。
「これはメンテではない」
「では何か実験ですか?」
「うむ。前に作った猫化ウイルスをフラッシュに入れてみたんじゃよ」
「えっ、何でまた!?」
軽く言うワイリーにびっくりしてメタルマンが声を大きくする。それにも大して動じぬまま、
ワイリーはセキュリティを片っ端から解除されてぐったりと無防備状態になった青い息子機体を見下ろした。
「猫というのは奔放で好きに生きるものじゃ。じゃから妙にストレスためがちのくせに
 平気なふりをする癖のあるこやつに入れてみようと思ってな。しかも意地を張るしのう」
まぁそれでだらだらできれば少しはリラックスできるかと踏んでみたんじゃ。
「はぁ…」
「こうでもせんと、目を離せばすぐ何か雑務やっとるからなぁこやつ」
「そうでしたか…お優しいですね」
父の言葉にくすりとメタルマンが笑うと、ワイリーはにやりと意地悪く笑みを浮かべる。
「平気なふりをすることにかけてはお前も大概じゃがな、メタル?」
「えっ!?」
思いもよらない矛先の向けられ方に、メタルマンがおろおろと焦った。からかうように
口端を釣り上げながら、ワイリーはパシュンとポッドをあける。空気が抜ける音とともに
二枚貝が開くように上が開き、未だ意識を飛ばしているフラッシュマンが姿を現した。
「ぶっちゃけた話、お前に入れるかどうするか悩んでおったが、素直さでは
 お前の方がマシじゃからな。だからフラッシュに入れてみた」
という訳で、と器具を取り出し、ワイリーはくるりとメタルマンに向き直った。
「耳としっぽは、こやつはどうしようかと思うんじゃが」
「お手伝いします、是非!!」





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