Main3

□3
13ページ/19ページ






「あ、つッ…」
「!? どうしたの、大丈夫フラッシュ?」
「ん、平気。引っ掛けただけだ」
指を押さえる弟機体に慌てて声をかければ、へらりと笑って返された。
「失敗ったぜ。流石の切れ味だな。メタルも気を付けろよ」
自分達の前にあるのは、大きく鋭利な針。
基地内に配置される予定の対ロックマン用トラップの、帯電式針山の改良版の試作品。
博士に頼まれ、それの調整を二体でしていたところだった。
まだ電流は流していないものだが、それでもその鋭利さは折り紙付きだ。
庇うようにしている手をそっと包む。
「無理しないで。後は俺一人でもできるから、もう休憩しなさい」
悔しいことに自分より若干背の高い青い機体を見上げれば、む、と唇を曲げられた。
「なんだよ、平気だってば。ちょい掠めたくらいだ。つか、お前だって鋭いものは苦手だろーが」
「そうだけどさ…」
「な? だったらいいだろ。つーか、一人でなんて非効率的なこというの、らしくねーな」
「…うーん…そうかな…」
「それに、どっちかが破損しても、一緒にやってりゃ破損したとこ直してやれるだろ?」
じゃ、続きしようぜ?
くすくすと笑う声に、複雑な感情が沸き上がりコアが締め付けられる。
鋭利なものが苦手な、自分と彼。それは、機体がそういったものに弱いことに起因する。
そして彼は、自分の武器でも、酷く傷付く存在だった。自分に与えられた武器で機体に傷が付く兄弟機は多い。
各々の武器がそれぞれ仲間内の誰かの弱点となるのはナンバーズの共通項なため、
だからそれがどうということはない。
しかし、だからとて傷つこうがどうでもいいなどというわけではない。
「どうした、メタル?」
「いいや。…そうだね、早く終わらしてしまおう」
「? おう。この研磨具合の確認終わったら、帯電時の熱処理がうまくいくかの
 データ収集だからまぁ、後はプラグ繋ぐだけで経過観察だから、もう終わるっちゃ終わるけど」
「そうか、了解」
「ていうか、手、いい加減返してくんない?」
「ん、もうちょっと」
言いながら、口元を覆うマスクを外す。包んだ手を握り直し、口元に近付けた。
「…終わったら、手当てしようね」
指先に小さく付いた傷に唇をあてる。
柔らかく唇ではめば、驚きに固まっていた表情が見る見る赤くなった。
「………っ!?」
すぐに手を取り返され、「ば、馬鹿か!」と顔を真っ赤にして背を向けられた。
試験用プラグを専用台に接続していく。
「……て、手当てするほどじゃねーよ」
「駄目。結構傷大きいじゃない。隙間から中に水や砂入ったら大変だよ」
隣に立ち手伝いながら、はっきりと言うと、困ったような気配を感じた。
視界の端に映る頬は、まだ真っ赤だった。
「……お前マジ、心配性すぎねーか…?」
「お前が言ったんじゃないか、一緒なら直すのも出来るって」
台から離れさせ、コンソールに命令を送りスイッチを入れる。ばちん、と針が帯電した。
後はモニタでデータ収集するだけだ。
「だから、直させて?」
俺の目の前でお前に傷が付いてるなんて、許せない。
向き直りながら、まだ赤い頬を捕まえる。驚いている隙に掠めるように唇にキスをして、破損した手に指を絡めた。
自分の武器は確かにこの存在を傷つける。
だけどそれは武器の話。
自分自身はそんなことしないと。付いた傷など癒せるのだと、そうありたい。
狼狽える視線が逃げ場をなくして承諾に伏せられるのを、愛しく思いながら眺めていた。





おわり

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ