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風が吹く。
纏う炎が引っ張られる。
揺らめく影が地面で踊り、炭化した何かがぱきんと音を立てた。





戦闘は好きだ。
自身に触れることも叶わずに不様に融け落ちて、或いは裂け割れていく様を見るのは気分がいい。
自身に傷一つ付けられずに一方的になぶられ、役立たずとして動かなくなる様を見るのは気持ちがいい。
全部全部燃え尽きたあと、倦怠感に機体を委ね、けぶる空気にぼうとたたずむのも心地いい。
だが、気分が乗らないときに、群れる雑魚を蹴散らすだけの任務など気が滅入る以外の何物でもない。
「超怠いんだけど」
「知らねぇよ、ヤらねぇならヤられてろ」
「ごめんだね」
同じく不満なのだろう、不機嫌さで醜悪に顔を歪めて吐き捨てる青に返し、仕方なく
出力を上げて機体に纏う炎の熱を上げる。
「ほら、離れててよ、またアンタ焦がして説教されんのはマジ勘弁してほしいからね」
「了ォ解」
「ったく、他の奴らが暴れたあとの敗残始末なんてついてない」
「同感だが、おいヒート、早くしろとお怒りの通信が来やがったぜ。クッソ、早漏共が」
少し離れたあと、ぺ、と地面に補潤液を吐き、忌々しげに青が愚痴った。
その内容に、眉間に皺を寄せる。
「うわ面倒臭、てことは何、上もう艦来てんの?」
「メタル直々にきやがったみてぇだ。」
「うっわ。あーもう、はいはい今行きますよ」
燃え盛る炎で場所がばれたのだろう。レーザーポインタが自分達にちらちらとあたり始めた。
「おおっと、こっちもおいでになりましたねェ」
「なにこれ結構いるじゃん。クイックさぼったの?」
「知るかよ。しかしよくもまぁまだ俺等に喧嘩売る元気があるな」
「そーだね」
ちらりと横に視線をやる。
「……で、フラッシュ。ウイルスは?」
「あぁん? ……そりゃもう、愛情たァっぷり込めた奴をプレゼント済みだぜェ?」
とっくにな。
言いながら白い指がコツコツと、壊れかけたコンソールを叩く。
浮かぶ下卑た笑みに、同じように笑みを浮かべた。下がり切っていたテンションが少しあがる。
「あぁ、アンタ本当に最低だよね。愛してる」
「光栄だぜ。さァとっととイキな」
青が言い終わると同時に地面を蹴る。慣性で炎が一瞬遅れて着いてきた。
そしてこちらに向いていた銃口は─────突如横を向き、味方へと火を吹いた。
敵から困惑の悲鳴が上がる。銃声は止まない。
笑いが込み上げる。
施設を破壊し、貶しめ貶めたもの達を追い詰め、一矢報いようとしていた彼ら。
それが、まさかの相討ちが始まるだなんて、予想だにしなかっただろう。
中には向ける相手が遠すぎたために銃口を自分に向ける自滅もいただろう。
あぁ楽しくて仕方ない。
そうなるようにウイルスを仕込まれたなんて知りもせず、なんて可哀相な終末。
混乱する彼らを包囲するように、大きくカーブして炎の軌跡を描く。
夜闇を橙に彩るそれらで、随分と季節的だと回路で思った。

電子のお菓子も業火の悪戯も、両方を以て仕上げと行こう。


乾いた風が吹く。
纏う炎が煽られ勢いを増し、余計に燃え盛る。
揺らめく影が地面で踊り、炭化したかつて動いていたはずの何かがぱきんと音を立てた。





おわり


13年10月13日 更新

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