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からりと晴れた空。
吹く風も乾いて、そして冷たい。
日が当たればまだまだ暑いのに、夜になると途端に熱源が恋しくなる季節。
木々の葉が微かに色付き始めた。地球の公転に伴って、気温が下がっていく。

ひどく、飢えを感じ始めた。






ふらりふらりと、足のおもむくまま歩を進める。
DWN、サードナンバーズの一体、スネークマンがあてもなく木々の合間を歩いていた。
蛇を模した頭部装甲を持つその姿から、はた目に見たら大きな蛇が森を進んでいるように
見えのるだが、そんなことはお構いなしにスネークマンはぼんやりとした顔で考える。
自分は一体、何をしているのかと。
今の自分の状況を顧みれば、鈍い回路の冷静な部位が馬鹿げたことをしていると
自嘲するのをスネークマンは感じた。
少し前まで自身のすぐ下にあった影は日光の角度でその長さをかえ、歪な形で地面にうつっている。
それだけの時間、こうしているのだ。
仲間からのいくつかの通信には、しかし未だレスポンスしていない。
するつもりもない。馬鹿なことだと自覚はあるが、まだ、頭を空にして足を動かしていたいのだ。
そう思った、その時。

「よう、どうした。こんなとこで」

ふとかかった声に、ぎちりと間接が軋みをあげる。
今一番聞きたくなかった声、会いたくなかった相手。先輩機体の一体、フラッシュマンだった。
しかしそんな思いをおくびにも出さず、さくさくと地面を踏みならしながら歩み寄る
青い色に、スネークマンはやんわりと笑みを向けた。
「あや先輩、ども。いや、ぼーっとして歩いてただけ。先輩こそ、何でこんなとこにっ…て、
 まぁカメラもってんなら聞くまでもねーか」
「おー悪かったな、そーだよ代わり映えもなく写真だよ」
からかうように言うスネークマンの言葉に、フラッシュマンが緑の頭部をごち、と軽くこづく。
しかし訝しげにアイセンサーをすがめ、次の瞬間にはぱしりとスネークマンの手を掴んだ。
「ッ、てめえ、何でこんなに冷えてる」
「……!!」
びり、とスネークマンの感覚系統が震える。
スネークマンの手を取りながら、フラッシュマンは眉間にしわを寄せた。
こづいた時に触れた温度が思いの外冷たく感じられ、試しにサーモグラフィで
確認してみればそれは気のせいではなかったと確信にかわったのだ。
スネークマンはもともと機体温が低めに類する機体だ。地質調査を主として作られた彼は
狭い洞窟や地中に潜ることが多く、その際体表から熱を逃さないよう、無駄に
エネルギーが逃げないよう効率重視に設計されていた。
しかしそれを抜きにしても、彼の手は随分と冷たくなっていた。
その手を暖めるように、フラッシュマンはカメラを一旦ケースに収めて自身の両手で包む。
そんな先輩機を見るスネークマンのアイセンサーが、僅か鋭さを増した。
「冷えてきた季節っちゃそうだが、冷えすぎだろ」
「あー、そういえばなんか今ちょいエネルギー少なくて。そのせいじゃないすかね。
 でもこれくらいいつものことっス。てか冷たいんなら触んないでよ」
離して。
軽く笑いながら言うが、しかしフラッシュマンは馬鹿言うな、と切り捨てる。



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