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いつからだろう、知らず視線があの色を追うようになったのは。
ほぼ同時に起動した八機体。個々のデータは既にインプット済。目覚める前から互いに知っていたはずの相手。
すぐに忙しく動かなければならない中、別段特に目を引くような珍しい色ではないあの色。
似た色はもう一体が備えていて確かに自分達の中にあってこそ少数ではあるが、
だからとてそんなことが視線を向ける理由にはならない。
その相手の性能が自分を傷つけるからと、戦いに出る際肩を並べることも背を預けることも
してはいけないと、創造主から言い渡されたのは目覚めてすぐのこと。
そんなこと別に気にしなかった。相手もきっとそうだったのだろう、ただ了解と答えたくらいだった。
そして勿論、直ぐ様創造主の言葉に従った。逆らう意味も理由もない。
しかし、隣立つなと言われたことを理由に、無意識にあの色を視線が探していたのではない。
戦うための機体。
もともと、仇敵と定める唯一体を、各々が一対一で倒すためにと組まれた構造。
共に立つことを目的にはされていない。故に、共に立てないのは大した問題ではない。
─────そう思ったのも、束の間。
それに至るまでの間。唯一の敵を倒すまでの、倒すための準備の間。
その機体を切り裂き貫き焼き尽くすものたちと肩を並べ背を預け、睦まじく手を組んで朗らかに笑い合う姿。
それを目の当たりにして、自分のコアは張り裂けそうなほどに痛んだ。
理解できなかった。
自分も他の仲間とは同じように肩を並べ背を預け、戦場を駆け抜ける。
見た光景は何も変なことはない、当たり前のことのはずだ。
感情の発露は自分は向いていないようで、自分には他の者ほど表情に変動は起きないが
それを抜きにしても、見たものはただの仲間同士の織り成す姿に他ならない。
故にこの痛みがどこからくるのか理解ができず、最初はただただ思考に明け暮れた。
その間も気付けば視線があの色を追い掛ける。
起動して間もない頃。ただでさえ現実に目にし触れるものや実際に機体を動かすためひたすら
データ更新が繰り返される中。それをしながらも、何故だか視界に収めてしまうあの色。
そして否応なく映る、あの色の傍にいる自分と似た、しかし違う色。それを認識するたびに動力炉が軋んだ。
そうして気付く。あの色の隣に立てないのは、自分のみ。自分だけが、彼の傍にいられないのだと。
あの色を切り裂ける機体も、貫ける機体も、焼き尽くせる機体も、その武器自体を彼に向けないのなら隣立てる。
しかし、彼の武器は誰かに定められず広範囲に及ぶ。自分はそれにあらがえない。
だから、あの色の傍に自分はいられない。彼の視線の先に自分はいない。共に立てない。
近付けない。
創造主に言われたときから分かっていたはずの事実。再認識したそれに何故だか排気が詰まった。
軋んだ指先が弱く丸められ拳を握る。
機体全体に走る痛みが何なのかやはり分からず、どうにも追ってしまうあの色をどうにか見ないように背を向けた。
聞こえる笑みを聞きたくなくて、脚部のブースターを起動させた。
傍に行きたい。
芽生えたそれに、ただ気付かない振りをする。




おわり



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