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言葉にするのは簡単で、行動で示すのは難しいのだとよく言うが、その言葉に
することこそ自身にとってはどうにも難しい。
まだ、行動を示すほうが幾らかマシだとそう思う。
例えば。
手を伸ばす。指を絡める。掌を合わせる。温度を確かめる。近づいてかかる排気がセンサーを擽る。
腕に抱いて腕に抱かれて、悪態を吐きながらも唇を束の間重ねる。
熱と信号を交わして、そうしている事実があるのだからそれで充分伝わってくれていいはずだ。
そもそも、想いがなければ行動なんかしやしない。なんの気持ちも抱かない相手に
こんなことする意味もさせる意味もない。寧ろしないし、させない。
だから行動する意味を、受け入れてる意味を汲み取ってほしい。
考えてみてほしい。
そう思うのに、無遠慮なほど真っすぐに注がれる視線に、耐え切れずそらせる。
絡んだ手を引かれる。その甲に、自身より高い機体熱を持つ唇が触れる。
力強い視線が少しだけ目蓋の奥に隠れるが、水分を補充させてまたこちらへと注がれる。
空いている手は壁に突いて逃げ道を塞ぎ、機体は壁に押しつけられて動きを封じられている。
両足の間、膝を割って脚が入れられ、いよいよ右腕を使う以外にはもうどうにもならなくなる。
無言で見つめる真摯なアイセンサーの奥に宿るのは欲求、苛立ち、焦燥、そして懇願。
言葉にするのは簡単だとよく言うが、言葉にすることこそ自身にとってはどうにも難しい。
だから、行動で示しているのに汲み取ろうともしてくれないのか、或いは分かっていないのか。
それとも、全部分かってるくせに、それでも言葉を求めているのか。
指が絡み唇が触れている右手が熱くて、どうしてか上手く武器が作動しない。
振り払うため藻掻こうにも、注ぐ視線が動きを封じる。
唇が震え、言葉になる前の何かが微かな排気に変わってもれていく。
たった二文字。されど、何より声にし難い二文字。
その短い言葉を求めてこちらを追い詰め、そして焦がれる姿を見せる相手に、
なんて卑怯なんだと回路で愚痴をこぼした。



おわり



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