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少しひんやりとした、細いそれを掴む。
決して脆いわけではないが、負荷をかける方向によっては容易く手折れそうなもの。
さして興味無いはずの存在。何の気紛れか視界に映ったそれを手にとって眺めていた。
存外に細やかな動きを見せるそれ。ぐいと、目の前に近付けるように引く。
人間を模した、自身にも同じように施されている五本の存在。
自身の排気がそこへ降り掛かり、自身の手と掴んだそれの温度差をより感じた。
冷たさはまだ消えない。しかしその差を味わうように、白いそれに唇を這わせた。
すると何かの拍子に見た、手の甲に口付ける人間の構図がふとメモリから呼び起こされる。
今の自身の構図はそれに酷く似ているように思われたが、即座にどうでもいいと切り捨てた。
これはただの気紛れに過ぎない。ほんの一瞬の好奇心にも満たない、関心。
柔らかな表装、その中の金属、間接の軋み、ひやりとした温度を唇で味わう。
そして隙間にぐり、と舌を押しあてた。ぬるりと滑り、それが微かに跳ねる。
そのまま一本を口の中へとくわえ、熱をうつすように舌を滑らせた。その細さに、
肩を震わせか細く漏れる声に、ざわりと歯をたてたい衝動が機体を駆け巡る。
その衝動を読んだかのように、咥内の指が擽るように歯列を撫でた。
その動きを嗜めるように軽く噛み付く。少し歯が表装に食い込む感触に、じりじりと回路が凶暴性を増した。
しかし、今獰猛さに身を委ねて噛み砕いたところで、恐らくこの青はあらがわない。
噛み砕いて中のジョイントを磨り潰し、感覚系統ごと引き千切ったとしても、
そのまま飲み下したとしても、あらがわない。
そう思いながら、指に舌をからめつつちろりと視線を向ける。
されるがままで享受しながら、目の前の青は、どこまでも不適に笑っていた。





おわり

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