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逃げもしない。応えもしない。酷く残酷なそれ。




好きだ恋しい愛してると言葉にすれば、心の底から見下した笑みが返される。
欲しい触れたい触れられたいと行動すれば、腕が許容を表し背に回される。
抱く機体はあらがわず、絡む四肢は積極的で、抱き締め唇を落としながら愛を囁けば、
返されるのは思ってもいないだろう上っ面だけの優しい返事。
向けられるのはいつだって下卑た笑顔か、愉悦に染まったものか、残虐な表情か。
────そして、こちらが視線を逸らした隙の、無表情か。
たまに浮かべるその無表情を除けば、基本的に相手は自分を拒まない。
寧ろ積極的に受け入れ、一時の戯れに興じて溺れる。
しかし、その代わりなのか知らないが、口付けだけには、滅多に反応しない。
気紛れなのか、興が乗らなければなのか、全くタイミングが見極められないが
反応するのは本当に極稀だった。
キスが嫌いなのかと最初は思ったが、しかし重ねたところで嫌がりも逃げもしない。
かといって滅多に応えようとはしないため、好きなわけでは絶対に無い。
反応するときの相手のそれは、たまらなく濃厚でずっとそうしていたいくらいなのに。
何故なのかと、尋ねたところで教えてもらえるわけもないとわかっていた。
読めない意図。察せない思考。自分という存在に興味があるかすら、計り知れない。
だけどそれでも。
構わない。構わない。構わない。
想いが届かなくても構わない。言葉が響かなくても構わない。
ならば届かせればいい。深く響かせればいい。
底知れないその心の内を、全て俺で埋め尽くしてあげるから。
自身の特殊武器に相手の番号を刻み込んで、少しでも傍に感じられたらとその数字に唇を落とす。
今は傍にいない青の、薄い唇を思い返すと、口の中で知らず舌がうねった。
やわらかなあの唇に噛み付きたい衝動を、今は必死で押さえ込む。
帰還したら、その残酷なそれに愛を囁こうと決めながら、唇を落とした武器へと指示を下した。




おわり

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