鰤
□玉蜀黍とお姫様。
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赤面した顔をごまかすように背ける。
「発音記号は[越後]と同じ!フルーツ・イントネーションは却下。」
「!?…あぁ、そ。ごめんなさい。イチゴくん」
ペコリ。丁寧に頭を下げた。イントネーションが妙。
彼女の周りだけ、なんか涼しそうで近づいた。
怖がられてなさそうなのが、内心嬉しかったり。
確か最近、タツキが構ってる奴だったな。
名前とか顔をちゃんと覚えられない俺が即、覚えた。理由は…聞くなよ?
「…オリ「おっまぁったせぇーーーーぃっ!!」」
バタン!!
ハデな音をたてて玄関が開いてタツキが出てきた。
「まだちょーっと散らかってるけど……おやぁ〜?、一護なにしてん?」
タツキは俺に気づくと、顔をしかめて
「なによ?アンタ…姫に変な事してないでしょうねぇ?」
「変な事って……どーゆー目で俺を見てるんだ?お前わ…」
だいたい、まっ昼間の路上でナニをどうするんだ…と、言いかけてやめた。
硬派な俺のイメージが崩れる。
タツキはオリヒメを家に招き入れていた。
「あー、遊子が…持ってけってさ」
袋いっぱいのトウモロコシを、腰の辺りまで上げタツキに見せた。
「うおぉぅっ、すっごいぢゃん!どしたの?」
「なんたらって患者からの差し入れだとよ」
「なんたらって………いい加減、おばえなよ?人名。サンキュー」
頭を振りつつ、礼を言うタツキに無事荷物を渡して、帰ろうとする襟首を捕まれた。
「まーまー、寄ってけって一護。どーせ暇なんでしょ?」
「!なんだよっ?!」
「あ・そうだ…アンタ [オリヒメ]言うの禁止、ね?」
「はいぃ?何だそりゃぁ…ぉい」
「[イノウエ]さんから始めなさい」
「あぁっ?」
急になに云ってるんだ、この女。
しかし、妙に凄みのあるタツキの表情に、これ以上ツッコむ勇気は俺にはない。
タツキに聞かれぬようにブツブツと小声で文句をいい、勝手を知ってるタツキに部屋に向かった。
背後で母親を呼ぶ幼馴染の大声が聞こえる。
部屋には[イノウエ]さんがよく出来た人形みたく、ちょこんと座ってた。
「ぁ…イチゴクン」
イントネーションがまだ微妙だ。
「悪いな…邪魔して」
折りたたみのテーブルを挟んで向かいに座った。