□玉蜀黍とお姫様。
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「お兄ぃ〜ちゃんっ!お願い、ソレっ!持って行って欲しーのっ、タツキちゃんのトコっっ」

帰宅するなり、双子の片割れが指し示されたのは台所のカウンター。
スーパーのデカい袋に皮付きのトウモロコシがはみ出していた。

「…どうしたんだ、コレ?」

なんでも、親父の患者からの差し入れらしい。
町医者の親父は、外見に似合わず意外と近所からのウケがいい。
男ヤモメで子供3人抱えてるおかげか、昔から人様にいろいろ頂いている。
遊子が名前を言ったけど、一護にはその人物が誰だか分からなかった。

「ヨロシクネ?お兄ちゃんv」

歳の離れた妹は、こう話ている間も電卓片手に、小さなメモ帳と新聞の折込みと…なにやらせわしなく。


この状態の遊子に反発してはならない。
生き延びたければ。

黒崎家暗黙のルール。


「…行ってきます。」

内心、エライ面倒くせぇけど。




>>>>玉蜀黍とお姫様



タツキの家は近い。
1分で着く。もっと速いかも。
とはいえ袋いっぱいのトウモロコシはかなり重い。

7月の日差しはキビシくて、頭頂部から汗がだくだく流れてくるし。
学校の鞄、持ったままだし…なんで置いてこねぇんだよ、アホか俺。

「あ……っちぃ…」
口走っても涼しくならねぇが。


タツキの家の前に人がいた。
肩ぐらいの髪の毛がサラサラして、同じ馬芝中の制服。女子。

「…客、か?」

ウチの学校に外人、いたっけか?

そう聞いたような、数人を思い出してみたがなんか違うっぽいし。
それよりも、客だったらマズイよな。

一護の外見はどう言い訳してもヤンキーにしか見えない。
日頃のおこないもそう思われて仕方がないほど、そのとうりだった。
本人はそのつもりないが。

少し待ってみるか。
額に流れてきた汗を腕で拭う。

だいぶ近くに来ていたから、さりげに通り過ぎる事にする。
外人が一護に気がついた。
サラサラの胡桃色の髪にセーラー服。

「…………」 
「……ぁ」

ピンク色の唇が小さく開いて

「…ぇっとぉ…[イチゴ]くん?」

思っきりなフルーツ・イントネーションで我に返って。
うわぁ、思いっきり見惚れてたわ。ハズぅ…。

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