□雪カキ氷
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「…ぁ……雪」
「ぉ、ホント」

ひらひらと、降り始めたばかりの雪は小さくて、落ちても跡も残らない。
必死に井上が受け止めようとして、やっと指先に水滴らしいモノが付いたぐらい。

「あ〜ぁ…すぐ溶けちゃうなぁ!」

いっぱい降ってるのに…と、夜空を仰ぎ見て俺もつられる。

「…降り始めたばっかだからな」
「ね、ね?積もるかな??」
「さぁ〜な」

心底嬉しそうな井上を構いつつ、積もったら学校休もうか、と考えていたり。
だって、道はヌカるむし、バスはこねぇーし、寒いし。

そんな事思ってたら

「黒崎くん!積もったら明日みんなで「[雪でカキ氷]は、しないぞ」っっ………」

きょとん。と、目を丸くした。口開いてるし。

「超能力!」
「違います!」

びしっと指差す井上の発言を、即否定した。
来ると思ったんだ。

「毎年、雪降るたんびに云ってんじゃねーか」

そう、毎年恒例の発言。そのたんびに全員全身全霊全力で阻止する計画でもある。

「はて?そーでしたっか??」
などと、惚けてるあたりは明らかに確信犯だし。

「雪なんて、腹ん中入れたら下すって。大気中のゴミなんかを拾って来てんだぞ?」
もちろん、学年3位の頭脳の持ち主である井上が、知らないハズはないけど。
「夢がないですなぁ〜、黒崎くんは。メルヒェンでないですか?」

ため息と共にじと見する。おまけに変な発音だ。
「メルヒェンで腹下したくねぇよ」
だいたい下した時点でメルヘン失格だ。

「いいもん。1人でこっそり試すモン」
「…何でそんな…[雪カキ氷]なんだよ?」

誰だって1度は思う時はある事だけど、コイツみたいに実践したがる奴はいない。
ちなみに、俺が実践したのは雪にションベンかけて[氷レモン]とか云う奴。

とーぜん食っちゃねーし、小学生の時の話だ。

「おいしそう、だからです!」
「そ〜かぁ〜?」

解らん。そー云う井上の方が遥かに美味そうだけどな。

「第一、雪山で遭難したりした人は雪を食べたり、溶かしたりして飲んで水分を補給するそうですよ?」
「遭難してねーだろ?俺ら…」
「う………」
「第一、雪山は大気がキレイだ。ここは東京都」
「うぅぅ〜…」

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