鰤
□ひかり。
1ページ/6ページ
2つの大きな霊圧が烈しくぶつかりあう。
【破面】十刃bS ウルキオラ・シファー
[死神代行]黒崎一護。
ウルキオラは抜刀していたが、[帰化]はしていない状態。
一護はすでに卍解していた。
2人の霊圧が大気を振動させて【虚圏】中に広がっている。
強固な結界越しでさえ、争う彼らの波動が感じられた。
抜け出せるかもしれない結界だけど…
織姫は行動に移す事が出来ず、凍りついていた。
>>>>>> ひかり。
「おとなしくしてろ」
王座を思わせる椅子の前にウルキオラは、織姫を連れ結界を張った。
無表情な眼はなんとなく、さっきより表情があるように織姫は思う。
ウルキオラの背に一護が言う。
「…少し、話をさせてくれないか?」
目だけを動かし、ウルキオラは一護を一瞥し、織姫を視る。
「……いいだろう」
静かに離れた。入れ違いで一護が織姫の前に立つ。
これがなければ、な………
思って手を伸ばし、一護は結界に触れた。
「Σっつぅ!!」
弾かれた。
結界の力で腕が痺れて抑える。
「…ってぇ…」
「……ぁ…」
声をかけようとした口は重くて、言葉が消える。
ただ、見てる事しかできなかった織姫に視線をむけ、一護は困ったように笑う。
「へへっ……大丈夫だ。………ンな顔、すんなよ」
…頼むから。
そんな表情井上にされると、どうしたらいいか判んなくなる。
「…黒崎くん」
やっと言葉に出来た。
でも、後が続かない。
「井上」
黒崎くんが呼んでるのに。
「井上………俺…俺さ、結構弱かったりするけど」
弱くなんかない。
じゅうぶん強いよ。黒崎くんは。
いつも、先頭になって戦ってくれる。
いつも、怖がってるのに。
…弱かったのは、私の方。
「頑張るから………!頑張って、とりあえずアイツを…シメる!!」
勢いよくウルキオラを指す。
ウルキオラは無表情に、ジロリ。と睨んだ。
「…今度こそ……井上を守る。もっと強くなる。…だから…」
両手を広げて、真っ直ぐ織姫に訴える。
「…だからさ……一緒に【現世】に帰ろうぜ!!!」
…頼むから
なんでもいい、笑ってくれ。
ほんのちょっとでいいんだ。
微笑んでくれたらきっと、俺はなんでも出来るから。
井上……
結界越しの井上が少し、微笑んだ。
泣きそうな表情で。
「黒崎くん…」
いつもの笑顔じゃないけど、今の俺にはじゅうぶんだ。
「…待ってろよ。ちゃんと戻ってくっから」
一護は嬉しそうに言うと、背を向けた。