□kiss me?
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静かに戸が開いて、井上が戻ってきた。
掃除用具のある、ロッカーの脇に雑巾を掛けるのを眺めて、
アイツさっき[キス]とか云わなかったか?
日頃から、そういう色気のある単語を、井上の口から聞く事はない。
笑顔で、敬礼モドキのポーズをとり

「完了。で、ゴザイマス!」

と、言うピンクの唇に視線がいき、逸らす。
[キス]って云っただけじゃん、なに思いっきり期待してんだよ。
思考を、ソッチ方面から変えようとしても、すでに頭ン中は[キス]でいっぱい。

仕方ねぇよ。俺は健全な男子校生だ。

「すまねぇ…かたずけさせちまって」
「いいんデスヨ〜v」
「ん、で?さっきの……何?」

…我ながらワザとらしい。

「ぁ……ぅうん。やっぱり、な・なんでもないの。気にしないで!うん。」

赤く顔を染めて井上は、豊かな胸の前でヒラヒラと手を振る。
無理、気にしたいぜ。
終わらせるには、実に惜しい話題だ。

「ぇえ〜と…、キっ…キ・キ・キス。…が、どうとか?」
「!…ぁっ」

とたん、さらに赤くなって顔を覆った。
[キス]2文字を、カミカミの己の情けなさは置いといて。

「………井上?」

覗き込むと、指の間から上目使いで

「…聞こえてたの…?」

消えりそうな声で答える。
これは、ちょっとしたアイドルやグラドルより……クル。

「ちょっと…な」

いやいやいや、ちょっと所じゃない。

「……あの…、ね」
「あぁ」
「そんな大事な事じゃ、ないんだ」
「いいって」

少し間を空けて、織姫は恥ずかしそうに話始めた。

「1組の子たちと、千鶴ちゃんとマハナちゃんと、2年の先輩とお話しててね」

ちらっと一護をみた。「?」

「そっ…そのぉ〜…始めてキスしたのいつ?って話になってぇ…」

女子ってそーゆ話好きだよな…

「…で、男の子はどうなのかなぁ〜って、黒崎くんに」

俺に…って、井上さん。
男を代表するにはあまりにも、経験ございませんんが?
水色に聞けば一発だけど、女子には解らないだろうな。

「俺?」
「うん…ダメ?」

正直、井上の「ダメ?」に俺は弱い。

「や、そーゆぅんじゃねーけどよ…」
「だって、つ…付き合ってるんでしょう?朽木さんと…だから」
「はぃい??」

なぜそこでルキア?
どうしてそうくる?
っていうか、どうやってきたんだ?
話の流れをリピートしてもその要素は全くない。



……………あ。


唐突に、思いっきり忘れきっていた噂を思い出す。
【尸魂界-ソウルソサエティ】にルキアを助けにいくのを半分、あきらめようとしてた時のこと。
誰にも話せなかったそれまであったの事、俺が思った事なんかを井上に話した。
忘れていたから、妙な噂の訂正とかは、もちろんしていない。

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