□クリスマスの話
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『ま・いいか、井上。お前、今から出て来れるか?』
「…今って…今っスか?」
『他のどこに今があるんだ?』
「じゃ……ま・待って。ちょっと着替えるっ」


うわぁ〜…どうしよう!
慌ててクローゼットに向かう。

急な黒崎くんの誘いだけど、断るなんてできません。
でも急に今って…な・何着たらいいかな?
あぁ、しかも着ただけじゃ外は出れない。
髪の毛も梳かしてないしー!私、バカーー…

『は?いいって、そんなん。…そこまで来てるから』
「へ?そこって…」


コンコンコン☆


『ん、そこ』




…………あきらかにウチの玄関をノックする音。
この場合[そこ]じゃなくって、普通[ここ]と云うものでは?

「え…あ、あぁ待って・待って?今、開けるから!!」
『や…いいって!』

バタバタと玄関を開く。
何か、はおるつもりで掴んだモノはクッションだった。
間違えたって気付いた時はもう遅い。

「っい…お前っ?!」
「ほーほほほっ!いいの、いいのっ!入って!!」

こーなったらヤケクソ。
恥ずかしいけど女王様キャラで、無理やり黒崎くんを引きずり込んだ。

「なんつー……カッコしてんだよ」

呆れ顔で、脱いだコートを肩にかけてくれた。
優しいなぁ…でも

「はぁぅっ…冷たい…」
「ったりまえだ、外にいたんだから」




「はい、どうぞ」
入れてきた珈琲2つ、テーブルに乗せる。
もう、恥ずかしすぎてマトモに顔が見れない。
とにかく何か着なくちゃ…て、出してあったパジャマを着けど。
タオル地の白い肌触りの気持ちいい、膝丈くらいのワンピースなパジャマ。

『んな、カッコだとは思わなかった』って黒崎くんは、可哀想になるくらい平謝り。
でも、さっさと着替えない私がイケナイんだよ?
それに黒崎くんなら見られてもいいかな…なーんてね。

「おぉ。サンキュー」
「さ…さっ寒かったで…しょう?」
「んー、さ・流石にな…」

気まずーい空気が流れ、2人別々の方を見て会話する。
こ…このままじゃ間がもたない。なんとかしなければ!

「あ「あのっ」」
「「………」」
「「ごめっ…」」

「…謝ってばっかだよ?さっきから」
「お前だって」

思い切って、そろ〜っと顔を上げると黒崎くんと目があって。
なんだかおかしくなって、吹き出してしまった。

「…笑うか…」
「だって!……超・ハモって…おかしいっ!!」
「う…へへっ、そうだな」

ちょっと照れくさそうに頭を掻いて、腕時計をちらっとみる。と
「ぅお!ヤバ…」
急に立ち上がり、ハンガーに掛けたコートのポケットをあちこち漁る。
どうしたんだろう?
「……探しモノ?」
あぁ。と低く唸ってなんだかブツブツ云ってるけど、よく分からない。

また忘れ物なのかな?コンちゃんとか、代行証とか…黒崎くんって結構忘れ物多いんだよね。
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