APH*

□事後報告編
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広い庭の片隅で、やっと探していた物を見つけて溜息を洩らした。
和紙を身に巻きボロボロに刃毀れした折れた刀身を日に翳す。

昨晩の忘れ物。
鞘は先にプロイセンくんが見つけてくれていた。
柄は私が見つけ出し折れた刃だけがなかなか見つけられなかったのだ。

よく私の我儘に耐えてくれた。
刃毀れした無残な姿の中にも、凛と美しい力強い名刀の名残が窺える。
名刀・名器と呼ばれる物は数あるが、"国"自身の剣と交わえる事は滅多にない。
最後にそれと対し散れたのだ。
刀も本望だろう。

持主もきっと喜んでると懐かしい人の事を思う。
もう面影すら思い出せない。
折れ刃をそっと指でなぞる。



「おぃ!指、切るぞ」

声に頭上を見上げる。
眩しい。
日に照らされた白いシルエットが目にイタイ。

かまわず目をシパシパさせた私の腕を取りあげて、膝を付くと折れ刃を観察した。

「あーぁ。酷ぇな、こりゃ。ナントかなるんか?」
「なるワケないでしょう。折れてますし。貴方のは大丈夫なんですか?」

放っておきゃぁ勝手に治るさ。
ケセセっと笑うとプロイセンは私を覗き込んだ。

「……結構なモンなんだろ」
「名刀も、こうなっては只の屑鉄。刀匠にでも相談しますかね」
「治るのか?」
「まさか。再び刀にした所で棚に飾られるだけです……鋏か包丁にでもして貰いましょう。持主もそう願うでしょうし」

ふふっと笑みを浮かべる傍で、大袈裟に息を吐き出して私の髪をわしゃわしゃと掻き乱す。

「っなんです?!」
「やっぱし。お前のじゃねぇんだな」
「返しそびれまして」
「ふ〜ん?」
「かなり昔……とっくにこの世には居ませんよ、"人間"ですから。でも「どんな奴だ?持ってたの」」

言葉の途中で聞いてきた。
この人にしては珍しい事を聞く。

「"王"に成ろうと夢半ばで道を断たれたうつけ者ですよ。少し貴方に似てますかね?」
「俺は生きてるっつの」

『似てる』というのが嫌なのか吐き捨てるようにボヤく。
その表情が子供のようで可愛いと口元が緩むが口にはしない。
「はいはい。しかし何故私のでないと?」
代わりに先程、途中で切られた問いを続けた。

「そら……自前のじゃねぇ限り、自分に似過ぎる武器なんか使わねぇだろ」
「……似てますか?」

なんとなく心外な心持で師匠を見上げる。
多少思ってもいたしコレの持主にも云われた。
"刀"に似ているというのはどういう事だろう?
……あまり嬉しくはない事だろうが。

「似てるねぇ」
呟いてまじまじとボロボロの折れ刃を眺め私を見、急に視線を反らした。

「……エロイセン」
「っな?なんでだっ?なんもしてねぇだろが」

ムキになって云い返す顔が図星だったのか少し赤い。
しょうもない事を想像しないで欲しい。
よっこいせ。と立ち上がりギルベルトから鞘を受け取って、折れ刃と柄を収め少々羨ましい気分で眺めた。

"似ている"というならば。
私は"国"としてこのように成れるだろうか。


「前言撤回。やっぱ似てねぇ!」

唐突な言葉にプロイセンを見上げると満面の笑顔で、つられて私も同じ顔になる。

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