APH*
□事後報告編
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兄は“記憶”が戻った……らしい。
はっきり、いつ頃からなのかは判らない。
それをオレが気付き知ったのは、かなりの時間が経ってからだった。
あの後、抵抗する兄を2人で押さえつけ怪我の手当てをした。
兄の云った通り血は既に止まっていた。
しかし、後頭部の傷が開いてしまっていたし、あっちこっちに擦り傷や切り傷がある。
イタリアが作ってくれた暖かいスープを3人で味わい、4人一緒にリビングで休んだ。
兄が日本から離れなかったのもあるが、イタリアがオレから離れてくれなかったせいでもある。
明け方目覚めると、日本は兄とゲームの話なんかしていた。
朝一番で兄と日本を病院へ連行。
検査の結果、2人とも異常はなく大きな怪我もなかった。
兄の頭の開いた傷を軽く縫ったぐらいだ。
家に戻り何度目かになる
「そろそろ、ちゃんと説明してくれないか?」オレの問いかけに顔をしかめて兄は
「何?」
「何って。全部だ。深夜に空間開くわ、真剣持ち出すわ……オレは何も聞いてないぞ」
「んで、お前に言わなきゃなんねぇん」
「何でっ……て。兄さんっ」
声を荒げた所に日本が慌てて割り入った。
「待って下さい!認証の許可をお願いしたのは私です。ドイツ、貴方に一言御相談すべきでした。しかし、私とプロイセンの私事でしたので介入して欲しくなかったのです。勝手をした責は私にあります。申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げようとする日本を、慌ててイタリアが抑えた。
「待って待って!日本、ドイツはそーゆコトして欲しいんじゃなくってさ。怒ってんじゃなくってぇ」
イタリアの言葉に頷き兄を睨む。
眉間のシワを増やし口を開きかけた兄を
「貴方は黙ってて下さい。話が反れてしまいますので」
きっぱりと日本が止めた。
「てめぇ……ま・いいならいいぜ?」
肩を竦めソファーに踏ん反り返ったのに、オレはふぅっと息をつく。
日本が勝手をしたのにはちゃんとした理由があるのだろう。
その事をとやかく攻める気はない。が、兄は違う。
記憶が無かろうが“国”だ。
散々日本が好きだの結婚だの言っていたクセに、止めさせる事もせず真剣で切り合うなんて到底理解出来ない。
万が一に大怪我を負わせたらどうする気だ。
ふっ。と何か違和感を感じてリビングを見渡す。
なんだ?