APH*
□下巻
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温めなおした珈琲をカップに継ぎ足して深々と肩を落とした。
『お前ってさ、怒ってばっかな?ハゲっぞ』
兄の言葉が頭から離れない。
近頃、気になりはじめた頭髪の事を云われたのがショック。な訳ではない。
オレもまだまだ。ちっとも大人になれてない。兄の事を云えた筋合いではない。
一見、通常運転に見える兄は記憶喪失だ。
あぁ見えて結構、不安だろうにオレは弟のクセにそこの所を考えてやれず、傷口にソルトを塗り込む真似をしたワケだ。
そうなった過程は兄が悪い。
兄が悪いんだが……少し考慮すべきだった。
あの、いつものペースに巻き込まれ冷静さを欠いたのは未熟さゆえ、精進しなければならない課題だ。
「あー…イカン、イカン」
珈琲を溢れさせてしまった目前に布巾が差し出された。
「オレと日本にもちょーだい」
いつの間にか隣にいたイタリアから布巾を受け取り、代わりにポットを渡して兄の様子を窺った。
イタリアがここにいるって事は、まぁ・そういう事なわけだから。
そこがオレの顔に現れているらしく、ニンマリと笑みを浮かべ
「心配しなくたって大丈夫、寝てる。疲れたんじゃないかなー。あ。でも、枕にされちゃってるから日本、動けなくってっ。あはははーっ」
話てる最中も抑えきれない笑いに口元を歪め、耐えきれず声を上げた。
あぁ。嫌な状況しか見いだせない。
はぁーっ。と再び溜息をつくと、イタリアがぴったりと体を寄せてくる。
「っなんだ?おぃ」
「ドイツの兄ちゃん、構ってくんない上に“初恋の方”独占しちゃってさ!ドイツ、寂しーんでしょ?」
「剥がれろ。抱きつくな。別に寂しくはなっ……服の中に手をツッコムなぁぁあっ!!」
「オレはムキムキの味方だかんねぇ〜っ」
押しのけ剥がしても、ヘラヘラと纏わりつくイタリアの台詞をちょっと嬉しく思いつつ、強制撤去を試みる。
魂胆は判っている。単にオレで暖を取りたいだけだ。
「あ・ありがとよ!分かったからくっつくなっ。服の中に入るなぁっ」
「えへへ〜ぇ。ドイツ、ムキムキーっ」
…………オレは……イタリアの行く末が心配だ。
ものすっごぉっくっっ!!