APH*

□下巻
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云っちゃなんだが“弟”だ“知り合い“だ。という、それを確証出来るような記憶が俺にはない。
なんとなく『あぁ、そうか』というカンジで今に至る。
それでも俺は”俺“という根拠の無い自信は揺るぎなくたっぷりあったりする。

正直、記憶ありませんけど其れが何か?というカンジ。
ソレが今現在の“俺”。

もちろん思い出してやれるならそうしてやりたいが、出来ねぇモンはしょうがねぇだろ?
ま・俺にその必然性が見いだせねぇのが問題だろうな。
困ってねぇんだ。ぶっちゃけ。




キッチンを穴だらけにした件で、“弟”と廊下に立たされ“イタちゃん”に叱られ。
穴だらけにしたのは“弟”だから俺には関係ない。
でも、廊下の壁や天井を破壊したのは俺だ。
聖書を手に近日中に直す事を俺達は宣誓させられた。


遅い夕食を堪能した後、リビングでどうでもいいサッカーの中継なんかをBGMにし、新婦の親父みたいな“弟”の眼差しを今現在、俺は一身に浴びているワケだが。
鬱陶しいったらない。

「いいかげん、しつけぇな?」
「兄さんには云われたくない」
「お?そーなん?」

“イタちゃん”を見ると“弟”を指さし盛大にゲラゲラと腹を抱え、小脇に抱えた日本ちゃんに目を向ければ神妙な顔で頷いている。

……そうなん?自覚ねぇけど。

耳の後ろをポリポリ掻く。
ん〜、でも日本ちゃんにならシツコイか?
眉を顰め見上げる日本ちゃんをじっくり眺めた。うん。
“男”と解ってもイイ。
むしろシツコクしたい。
頭を下げてでもシタイ。

俺は……決してそーゆ・シュミは無いと思うんだけどな。


「プロイセンくん、近いんですが?」

逃げようとする可愛い“弟子”を抑え込み、俺はかなり機嫌が良かった。
ずいぶん前から、“国”である俺達の結婚という事の意味と重大さについて、延々と“弟”に説教されているのだが頭にちっとも入ってこない。
入るハズもない。

指先に触れる、日本ちゃんのスベスベで柔らかい肌の感触と、サラサラな髪のいい匂い面白い反応に頭がいっぱいだし。

「ちゃんと聞いてくれないかなっ?!兄さん、大事な事なんだぞ!」

イライラと怒りを押し殺して“弟”が睨みつける。

「聞いてるゼ?善処してやんよ」
「その返答は認めない。理解してくれないと困る。それから、日本を離してやってくれ」
「断る」
「兄さん!」

声を荒げる“弟”を一瞥し
「お前ってさ、怒ってばっかな?ハゲっぞ」
溜息をついた。

「……っっぁれのせいだと思ってんだ!」

拳を振り上げ襲いかかる“弟”から日本ちゃんを抱えて逃げ出した。

やっぱ……俺のせいか?
だからと云って、どーかしたりするワケじゃないけどよ。

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