APH*

□プー散歩
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「おぅ!帰ったぜー」

奥へ声をかけ、屋内へ上がろうとジャンプするポチを捕まえ抱え込んだ。

フワフワした毛が汗をかいた腕や首元に張り付きアツいし気持ち悪い。
これでも3日に少しポチの毛を刈った。
ただ、ちゃんと短くするのを爺ィはかたくなに拒否した。
“フワフワ”がイイんだそうだ。
俺もコイツの“フワフワ”は気に入っているが、犬にしたらこの国の夏を迎えるに死ぬほど迷惑だろう。
可哀想に大きく下を出して息も荒い。

奥からテトテトと犬猫用の布巾を手に日本が出てくる。
薄い藍色の作務衣がやたら涼しそうだ。うん、決めた。汗流したら俺もアレ着る。

「おかえりなさい」
「門の前まで来たら涼しかった」

ジタバタと暴れるポチのリードを外してやりながら答えると、ふくふくと笑みを浮かべる。

「んふふ。今日は暑いんじゃないかと思ったので、打ち水をしたんです」

汗、凄いですねぇ。と呟いて俺の額を撫でる伸ばした指先が気持ちいい。
この国の基準に合わせても、未成年にしか見えない顔にリードを渡し、布巾をうばい濡れた足を拭いて屋内へあがる。
サンダルは自然乾燥だ。
日本はくるくるとリードをたばね、首を傾げた。

「遅かったですねぇ?何かありましたか?」
「んにゃ。主婦と女学生に引っかかっただけだ」
「流石はギルベルトくん。朝からモテモテで良かったですねー」

棒読みで返す日本にポチと布巾を押しつける。
「あぁ。コイツ、がな。いっぱい撫でて貰ったんだよなー?」
「そうなんですか?」

ぐりぐりと鼻先を撫でられるポチの顔を覗き込み
「良かったですねぇ、ポチくん。まぁ、こんなに可愛らしいんですから、仕方がありませんがっ」
馬鹿飼い主丸出しの満面の笑みで犬の足を拭き始めた。
“ちぃセット”とコンビニのビニールを示し

「そーかよ。じゃ、コイツ片付けてくるわ。菊、後でアイス喰おうぜ」
「えぇっ……アイスって。業務用アイス買ったばかりじゃないですか!」
コンビニのビニールにありえないとばかりに非難の眼差しを向ける。

「ガリガリ君」

ビニールから透けて見える青色を困ったように日本は凝視してようやく
「が……ガリガリ君なら仕方がありません。でも朝ご飯の後で!ビールもですよ?!」
「Ja!」

噴きだしそうなのを堪え左手をあげ奥へ向かう。
なんだあのカオ!
台詞に反して表情はオヤツおあずけ喰らいそうな子供のようだ。
まったく、百年以上経っても変わらねぇ。

そーだ。飯喰った後、ビール片手にのんびりアイツを撫でまくってやろう。
怒らせない程度に。


****** 終

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