APH*

□プー散歩
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暑い。熱過ギル。
6月末、まだ7月にもなってない朝。
あまり暑いんで非難したコンビニのビニールと、ポチ付きのリードとおさんぽセットの入ったカバン(別名:ちぃセット)を携えて、童顔にも限度があるだろう爺ぃの家に帰還中。
いつもよりかなり遅い。
今日はよく人に捕まる日だ。


最初は散歩コースでよく遭遇する主婦グループ。
犬を連れてる奴は同類だと思ってる節がある。女の性か詮索好きなのは万国共通。
苦手だから出来るだけ回避してるが……ま・見つかってしまった訳だ。
爺ぃともちょくちょく話す事がある彼女等は、なんでも近々フランスに旅行するらしい。
で、アドバイスはないか?と云われたが、俺にアイツの事を聞かれても困る。
ストライキが趣味だから調べてから出掛けるように。とか、話題をあっちこっちに飛ばしながらグダグダと。
フランス語と英語が勉強不足なのを気にしていた。
ま・ちゃーんと勉強してるなら大丈夫だろう。

爺ぃなんざ、俺の名をキチンと覚えるのに結構時間かかったし。
俺以外でもちゃんと理解出来るドイツ語で会話できた日は、わざわざ教会に出向いてまで神に感謝の祈りを捧げたぐらいだ。

やたらおせっかいな金髪の髭のフランスに人は、変態で女癖が悪いから気を付けろ。とは伝えた。
髭に会うかは判らねぇが、EU内何処にでも湧いて出るから一応忠告。
歩く国際問題:1みたいなモンだし。優しいな!俺。

それから、お揃いの白いブラウスに赤いリボンと短すぎるスカートの、軍隊のような集団にも捕まる。
彼女たちにきゃぁきゃぁと撫でられポチはご満悦だが、俺は非常にシンドかった。
若かろうが年寄りだろうが出る言葉は大体同じ。

「何処出身?」「背高いね」「日本語ウマ過ぎ!」「彼女とかいる?」「仕事はなに?」「目、赤いんデスケド!」

きゃぁきゃぁ興奮気味に立て続けに質問する。それを知ってどうするんだ?
興味本位の『聞いただけ』と云う無邪気なモノが、物凄い勢いで俺のHPを削っていく。
俺は適当に応え我慢した。
どこか爺ぃに似た日本のウチの人間は、まだ生まれて20年も生きていないからな。
時間に縛られた彼女らを見送り、オマワリさんに軽く職質されコンビニへ入って、今現在。

俺の心配はしねぇだろうが、拗ねられると困る。
家の前の舗道が濡れていた。
”打ち水”……この分だとおおかたの家事は片付けてしまったか、庭の手入れを先にしただけか。
おかげでなんとなく暑さが和らいだ気がする。よく手入れされた古い門をくぐり、駆けこもうとするポチのリードを短めに引く。
すり減った石畳に出来た水溜りに飛びこまれサンダル履きの足が濡れた。
庭樹の濃い緑が眩しい。
開けっぱなしの玄関へ足を進めるとひんやりした風が体を撫でる。

汗を流した後ひと眠りするのも悪くないな。
汗でベトベトなタンクトップをさっさと脱ぎたい。

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