APH*

□安眠枕
2ページ/3ページ


次第に静かな寝息が聞こえてくる。

「……どーっすんかねぇ?」

ふぅっと息をつくが別に困ってはいない。
イタズラしてやろうか。と、一瞬思ったがそーゆ・気分じゃねぇ。

そろそろシンドクなってる頃だろうと、毒吐きに付き合ってやるつもりで来た。
気持ち良さ気に寝入っていたのを起す事はしたくなかった。
間の抜けた顔で熟睡しているのを、自分で入れた茶と出してきた饅頭をツマミに、観察し待機していたワケだがまた寝入られてしまった。
睡眠はストレスを確実に減らす事が出来る。
まだ眠いつーなら、付き合ってやるまでだ。

ゆっくりと抱えるように、日本の体を移動させ座布団を折り、中で丸くなってる猫の位置確認をし横になる。
運んで布団に寝かせてもいいが、布団を引くのがメンドイしコタツから出たくない。
そして俺はコタツで寝るのが案外好きだ。
腕の中の日本が身じろぎしがみ付いてくる。
足なんか絡ませて来て。

日本がジャージで良かった。

サラサラな黒髪を指で遊び、首筋に滑らせる。
暖かい体温に動脈が波打つのを感じ、口元がニヤける。
多分俺、今とんでもなく締まりの無い顔してるだろうな。
それも心地良く、無防備な日本を抱きしめ目を閉じる。



暖かくて大好きな匂いが心地良くて、もぞもぞとしがみ付いた。
が、妙にリアルな質感につい目を開ける。
真っ暗な視界。
静かな寝息がかなり間近に聞える。

何が何故どうしてこうなった?
広いがっしりした背中を、ペタペタと確かめるように叩く。
うん。間違いなく、プロイセンくん。

ほっと息をつき、隙間から辺りを窺う。
自分の家……うっかり長々と寝入ってしまったらしい。
頭がだいぶ起きてきて……とりあえず起きねばなるまい。
体を動かすと、尻の傍に柔らかい感触があり手を伸ばす。
柔らかい毛並み。フワフワ……タマか。
猫を踏まないように慎重に体を起こす。

「……っぅうっ」

室内の温度に体を震わせ時計を確かめる。
あぁ、完全に夜。何もせず1日寝て過ごしてしまった。
呆然と座り込んだまま頭を振って、さっきまでの温もりが恋しくて手を伸ばす。

「うひゃぁあっ?!」

突然、手を握られ素っ頓狂な悲鳴を上げてしまい見ると、肩肘をつき寝転がるプロイセンが伸ばした手を握っていた。
暗がりで光る赤い目&白髪と共に爺の心臓に悪い。

「もう起きるんか?」
まだバクバクと波打つ心臓を抑え
「……ね・寝てたのでは?」
なんとか口を開く。
「寝てたゼ」

少ししゃがれた低い声。体を起こしバキバキと音をたて伸ばすのを、ぼんやりと眺めた。

「……どっから湧いて出たんです?」

ぽろっと漏れた呟きは無言で睨まれる。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ