APH*

□拉致ってやんよ!
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3カ月前。

何となく付けっぱなしのTVのニュースをBGMに、まったり麦茶を啜る。
だいぶ気温が下がってきたとはいえ、本日は最高気温23度らしい。異常気象だ。

「お前ン所、ホント面白ぇな?異常気象で色々大変なクセに、関心事は運動会なんだな」

ヘラヘラ笑う声に「恐れ入ります」と静かな声が重なる。
ちゃぶ台をはさんで日本はノートPCで仕事中。変な気を使わせたくねぇから、液晶が見えない位置に俺様は居る。
下手すると内政干渉になりかねないからな。
膝に奴の猫 タマをはべらせ撫でてると、日本が俺に聞いてくる。

「師匠、何かいい逃げ方しりませんか?」

よっぽど逃げたい事らしいしかめっ面が、ちょっと面白くて顔がニヤける。

「クリスマス、なんですけどね。断っているんですけど、近所に強引な方々が揃っているモノで」
出来れば静かに過ごしたいんですよ。と深い溜息をつく。

「そぅいや、いつだったかメタボの財布にされてたなぁ、お前」
「それを回避したいんです。特に今年はウチに居たいんで」

云いたい事は判る。伊達に入り浸ってる訳ではない。
とはいえ、その理由が通じる相手でもない。

「鍵、閉めちまえば?」
「メタボは壁打ち抜きますよ?」

あぁ、俺もブチ壊した事あったな、直したけど……本気で嫌そうな表情を眺め、頷く。


悪かった。以後、善処する。

「う〜ん……よぉ?20日位までに仕事片付けられそうかよ?」
小さく唸り日本は「出来ます、が?」小首を傾げた。
「よぅしっ!ちょい、貸しミソ?」

タマを抱え隣に移動してPCをブン取り、開いてるウィンドを全て最少にしてエクスプローラを開く。
戸惑う日本にタマを押し付け、代わりにその日本を抱えた。
ふんわりシャンプーの匂いがする。

「どっか行きてぇってトコあるか?」
「そぅですねぇ……温泉、とか」

これほどクリスマスを感じない爺臭ぇ答えもないだろう。
実際、遥かなる歳上で爺ィなんだから仕方ない。見た目はガキだが。

「……爺ィに聞くのが馬鹿だったわ」
「!いいじゃないですかぁ、温泉」

ま・その爺臭いチョイスを結構イイと思ってる俺様も、俺様だ。
赤面してムクれる日本のキレイな黒髪を撫で、目的のページを次々開いてく。

「何してるんです?っていうか、何をいったい?」


明らかに某テーマパークのページに困ったように見上げる。
イベント好きの日本人で、この時期で満室なら他を考えようと思ていたけど、案外空いていて良かった。
ここは近いし広いし、人が多すぎてコイツを探すにも苦労しそうだし、なにより入場料を払わないとホテルにも入れない、のか?後で確認しておくか。
安易な感じもするが、人1人探すには中々ハードルが高い。
毎年クリスマスは盛り上がるようだしな。
それにテーマパークの中のホテルって泊ってみたかったんだ。

「拉致ってやる」

フフン。と、やっと返ってきた返事に日本は目を見開いた。

「俺様がお前を拉致ってやんよ。プランに異議は認めねーぜ」

ニヤリと俺様は必要な全ての予約と支払いを完了させた。

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