APH*

□私の師匠
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私の愛犬ポチくんを、長い脚で器用に遊ばせるギルベルトを横目に茶を淹れる。
彼の弟ドイツが犬を飼っている為か、遊ばせるのがやたら上手い。
少し臆病な所のあるポチくんが、これだけ懐くのもホント珍しい……きっと同類と思われているのだろう。
ふとそんな考えが頭に浮かぶと、大きな犬に見えて来るから不思議だ。

「あ・そーだ。電車乗ったら痴漢にあってよぉっ」

遊ばせつつ思い出したように言った。
「またですか!」
悪かったな。またで!嫌そうに顔をしかめ吐き捨て、出された茶を旨そうに啜る。

男らしく引きしまった顔は整っていて品があり色気がある。
取っ付き難い雰囲気の割には、どこへ行っても痴漢に遭遇しナンパも(男女問わず)される。
イタリアが“オトコの敵”とこっそり称しているのも頷ける。

黙っていれば本当にカッコイイ。
黙っていれば。

まぁ何をしてもカッコイイと弟子の欲目のせいか、内心思っていたりする。

「ま・即効捕まえてぶん殴ったけどよ。大使館にチクられたらメンドイんで、外人のフリして逃げてやったゼ!セセッ、見せてやりたかったゼ。俺様の華麗なる撤退ぶりをよぉっ!!」

すっごく悪役な高笑いで楽しげに話す内容に、ガックリと肩を落とした。
ツッコミ所が多すぎる。
中身がコレだと知れてれば痴漢なんて事もなかっただろうに。
するのが悪いとはいえ相手もとんだ災難だ。

「フリって……どう見ても外人でしょうが。怪我、させてないでしょうね?」

別に身内を庇っている訳ではない。
彼は力加減が気分次第で、どうでもいい相手には容赦ない。

「は!知ったこっちゃねーゼ」
ポチくんにおもちゃをこれ見よがしに見せつけ投げる。
小さなボールは、勢いよく座敷から庭の奥の方に弧を描き飛んで行く。
小さなポチ君が一生懸命追うのを横目に、するりと本田の傍ににじり寄り

「俺様はなぁ。痴漢する方が好き、ナ・ン・だ!」
人の尻に手を出し撫でまわす。

「存じて、ます!尻から手を離して下さいっ」
「断るっ」

至近距離、キリリっと久しぶりに見る真面目な表情にドキリとする。
が背後ではギルベルトの腕と私の手が尻を巡り壮絶な戦いをしていた。

「プ・ロ・イ・セ・ン」

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