FF7*

□HISTOIRE:1
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やはり。
戻ってきてしまうわけだ。此処に。

クラウドは、ゆっくりと砂埃の溜まった床を踏みしめる。
とても古い教会。初めて来た時も崩れかけていた(正確には落下した)が、半年前程…いや、もっとか。ガダージュと名乗る青年と闘った時、さらに大きくブチ抜いてしまった屋根と、エントランス。そして…真ん中にぽっかり空いた泉。前は花畑があった。

教会に花畑…もアレだが、泉よりましなのは確かだ。
どっちも何となく出来すぎた感がある。
魔晄の採り過ぎ、開発とで土地の力が衰えているミッドガルドでは、どっちも大変珍しい。

此処でしか植物は育たない。

花畑の主は云っていた。
ライフ・ストリームの滲み出るスポットなんだろう。
あの後、ディープ・グラウンドのソルジャーなどとの戦いで、ウェルポンやヴィンセントがどうとか…よく解らないが。とにかく
そうとうグシャグシャに乱されたにも関わらず、花は案外しぶとく水辺に自生していた。
花の咲く時期ではないから葉だけが茂ってる。

さらり。

少しヒンヤリした風が、水辺に波紋を造るのを感じた。
適当な所に、担いできた荷物を置き腰を落着ける。

夜遅い時間でもそれほど暗いと感じないのは、屋根が抜けてるせいだ。崩壊したスラムの、元々閉鎖していた地区にある廃屋の周囲には、人の気配を感じさせる建造物はない。
だから、相当暗い。しかし明かりを付ける気分ではなかった。

煙草を取り出し火を点け、煙を大きく吸い吐き出す。少しづつ落ち着いてくる。
白い煙がゆらゆらと細く昇っていくのをぼんやりと眺めた。

だいぶ、ふりきったつもりなんだがなぁ…クラウドは独り苦笑した。
こんな風に思う分、かなりまだ引きずっているじゃないか。ズルズル、と。

でなけりゃ、引きずっていたいのか。
依存しているのかもな…すでに亡いエアリスに。

ズボンのポケットから振動が伝わって、携帯端末をゆっくりとした動作で引き出す。

ティファのアドレス。

そう云えば、そろそろ店を閉める時間だ…。
振るえ続ける携帯を、ぼんやりと眺める。
しばらくして振動は止んだ。

彼女と何があった訳でもない。ただ… 大きくクラウドは息を吐いた。
どうも連絡を取る気分ではない。
しかし、そろそろ電話には出ないと… 面倒な事になるだろう。

ゴリゴリと後頭部を掻き、端末をポケットに捻り込もうとした時、再び着信が入った。
しかめっ面でアドレスを見、今度は受けた。


「女の子を拾ったとか」

低いヴィンセント・バレンタインの声が端末から聞こえる。「リーブから聞いた」

「…あぁ」

微妙に苦笑雑じりな理由は、あえて聞かない。

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