FF7*

□HISTOIRE:6
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ただ【英雄】になりたかった。
それだけ。


それの意味する事なんて何一つ判っちゃいなかった。
だからアンジールの話している事の意味も、ジェネシスの苦悩も見えなかったし、セフィロスの孤独も知らなかった。
もっとも、アイツ等はそれを何とかしようと相談する事もなかったようだし、そうする術を知らなかった。自業自得、といえばその通りだ。

その何もかもが手遅れで、何もかもが手からこぼれ落ち消えていこうとする今、ようやくオレは全てを理解する事が出来た。

オレ達を抹殺しようとする新羅軍を殆ど潰した… ハズだが、数が減ってる気がしない。
いくら1STでも1人じゃ無理か…いや、単にオレが弱っているだけかもしれねぇな。
マテリアは魔力を喰いつくすばかりで、もう一発も力を発動しないし体はボロボロ、体力は限界を超えてとっくにソルジャーの戦い方ではなく、ただのボロ雑巾が暴れているだけだろう。
意識も記憶も考える事も、ごちゃごちゃして整理できねぇ。走馬燈ってヤツ?
[劣化]した今だから判る。ぶっちゃけ、怖かったんだよな?ジェネシス。


遠慮なく雨が降り注ぐ。全ての感覚が麻痺して、誰かが呼ぶ声と見知った金髪が目に映る。
「オレの分まで」

クラウド。

苦労して名前を思い出すとどんどん頭の中が整理されていく。クラウドがオレの感覚に[リンク]してきたからだ。
「アンタの…分…」
「そうだ」

[リンク]を切らなければ、新羅軍との戦いは勝ってたかもしれない。
ただクラウドは死ぬ。

新羅屋敷のカプセルの中、正気を保っていたオレは方条博士達の研究を盗み聞く事が出来た。
ソルジャーの[劣化]についてヤツなりに研究はしていたらしい。
セフィロス以外のソルジャーは[使い捨て]同然だったが、もしオレが生き残れば[劣化]したソルジャーの再利用の道が開けるという。
つまり、クラウドそのものをエネルギーとして吸収し補う事で、クラウドの死を意味する。
逆にクラウドが残れば、ジェノバそのものの能力を利用した新しいタイプの検体で、どっちにしても実験は成功になるらしい。
もっとも当のクラウドは重度の魔晄中毒に陥り、方条を残念がらせてはいたけど。
時々正気に戻るし、オレを生かすためにその力を使い廃人同然だという事は、脱走してしばらく経った頃気付いた。

方条の実験は成功していた。
だから、オレから切り離し新羅軍に挑んだ。

「おまえが」
「お前が?」
腕を伸ばしクラウドの頭を、自分に引き寄せる。
「生きる!」
「おまえがオレの生きた証」

ゆっくり上げた顔に、べっとりと赤い物が付いている。血… オレのか。
重すぎる剣を手繰り「オレの誇りや夢…」クラウドへ突きつけた。「全部やる」

力なく剣の柄に手を伸ばし、剣を離さないオレの手から強引に奪い取った。
その剣の柄を凝視する。

「俺が、お前の、生きた…証」
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