FF7

□Alice dans pays des merveilles
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>>> C'était un trou très profond.
   Alice tombe lentement lentement.

    とても深い穴でした。 ゆっくり、ゆっくりと アリスは落ちていきます。






◆ Le Commencement







海岸沿いの1本道をバイクを走らせる。
雨のニオイ。初夏の濃い緑の匂いと湿った土と潮の香りが、強風に混じって気持ち悪い。
でも、嫌いじゃない。
ゴーグル越しにクラウドは空を睨んだ。

朝のウェザーニュースで嵐が近づいているのは知っていた。
届け先の牧場ファームで休んでいくように勧められたが、そうしなかった。
(ボイラーの部品を届けたが、いつのまにか修理も手伝うハメになった)
別に、急ぐ理由はない…そこの子供がやたら高額な〈休憩料〉を取ろうとするは…まぁ、理由になるか。

遠く山の方に聞こえていた雷が、だいぶ近くに聞こえてきた。
視界に入ってくる海も大シケで、大きな黒い波が次々と飛沫を上げ崩れていく。
なだらかに広がる草原は潮風が吹き荒れ、背の高くない木を大きく揺らしている。
この地区エリア最大の牧草地には野生のチョコボなども多く生息していて、天気が良ければ群れに遭遇したりして実に気持ちのイイ道なのだが、今は一羽も見当たらない。

ミッドガルに近づくほど黒い雲が重く垂れ(あの辺りの空は常に鬱陶しく曇っている)、早い雲の流れの先に光の糸が2・3本走った。遅れて雷の音が鳴り響く。

少し急いだほうが良さそうだ。


スピードを上げた。雨の[荒地]はごめんだ。
ミッドガル近郊の土壌は汚染が酷い。乾燥したヘドロで、細かい上に水気を含むと粘り気があり、おまけに物凄く臭い。
服やバイクに付くと落とすのに苦労する。塗装も剥げるし…
過去の苦労を思い返し、クラウドはこの先の町[カーム]で嵐をやり過ごす事にした。
前方にそびえる谷を越えてすぐだ。
強風に水滴が混じり始めて、一際大きな雷鳴が大気を震わす。


ふ、と。何もない進行方向に違和感を感じて目を細めた。
同時にノイズのような非現実的な感覚が、クラウドを襲う。覚えのある感覚。



微かな〈魔晄〉の匂い…



目の前の空間が揺らいでいる。
何か―――来る?


瞬間プラズマが飛んだ。閃光に眼を眩ませつつも、ほとんど反射的に回避する。が、間に合いそうもない。

「つっっう!!!!!」

つんざくような急ブレーキと雷の轟音が頭に響く。
前方を、幾つもの大小様々な魔法陣が規則正しく絡み合って、消える。

[転移テレポ]系か?
初めて目にする形式タイプだ。

発動中の魔法陣に突っ込めば、もちろん無事ではいられない。しかも上位の魔法であれば。
陣の中心にはっきりした[何か]が形造られていく。


吸い寄せられるみたいに横滑りしていくバイクを必死で押さえつける。
ヤバイ。轢いちまう。


迫り近づくにつれ[それ]は人の形になって
「…っくぅっ…っ!!」




抜けた・・・




脳が、神経全てが、じぃんと痺れた感覚に堕ちた。

ウソ、だろ。

呆然と、突き抜けた[それ]を見送った。
我に返った時には、制御不能な車体ごと宙に飛んでいた。
強い衝撃が全身を襲う。




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