FF7

□Èpisode:1
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初めて乗る魔晄列車。
アリスはレッド13をクッションがわりにへばり付き、込み上げてくるのを必死に堪えていた。

この世界に来る直前の、電車の事故による精神的な症状は殆どないみたいなのでホッとした。
大きな事故にあった人の中には、日常生活もままならない程の症状を抱えてしまう人も多いと聞くし。
<殆ど>というのは… 酷い乗り物酔いで実は良く分からないから。

前にはマリンとデンゼル、隣はエアリスのお母さん。(エルミナさん、かなり若く見える人だ)
2人掛けのソファが向かいあって、真ん中が通路。
アンティークっぽい作りだけど、神羅時代からご自慢の最新機器はバッチリ搭載しているらしい。と後ろの座席の子供が、一生懸命母親に列車について話していた。
満員の車両はアリスとナナキ以外は賑やかだ。

魔晄列車が復旧した初運転。

出発はカームで盛大にセレモニーをし、終着はバーネット… ティファのお店のあるエッジと同じようにミッドガルの脇に作られた町で、一部5番街に続いている。
本来のルートはそれ程被害の大きくない2・3番街の辺りから、ぐるりと地下へ入り新しく出来た町の辺りに出て、終点はカームらしいけど。
いきなり全面開通と云う訳にもいかないのだろう。
そのイベント列車に招待されて乗っている訳だ。
お祝いムードで結構な事なのだが、私は気分が最悪だ。

「やっぱり個室の方が良かったんじゃない?」
マリンが呆れた様に言う。
元々個室に招待されていたからだが
『それじゃツマンナイよ!』と、普通車両をせがんだのもマリンだ。
「酔い率高いよな…っ」
ぼやくデルセンの腕をマリンが抓った。
仲のイイ2人からアリスは目線を外に向ける。

“乗り物酔い仲間”のアノ2人は、共にどこかに乗車しているハズ。
警備とかなんとか言っていたけど。
顔や手足が冷たくなるカンジを、ナナキに頬を押し付けて湯たんぽがわりにしてやり過ごす。

急に視界が明るくなって、上目使いで窓を仰ぎ見た。
列車は地上に出ていて、街の複雑な鋼鉄の骨組みがビルの頭と共に流れて行く。
ポンポンと宥めるように叩く、エルミナの手が気持ち良くて眠気を誘う。

何処かでプレートがあった頃を懐かしむ会話が聞こえた。大企業[神羅]が事実上世界を支配している頃。

クラウド達から見れば善くない事だらけでも、一般の人達からだとそんなでもないのかもしれない。
何となく聞きながらそんな事を思った。

「…何かあったようだよ」
ピクン。と三角形の耳を動かしナナキが呟く。

耳、かわいい。ユラユラとたくさん付いたピアスが動く。
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