小説X
□幻影昇華
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相変わらず自分には不似合いな場所であった。
貴族の住まう町はどうしてこうも平民を威圧するような独特の感覚を持っているのだろう。
レイディアはこの雰囲気をしかめっ面で感じ取りながら目の前を歩くオルクへと話しかけた。
「本当に騙す気は無いんだな。」
「しつこいぞ。」
「信用なんねぇんだよ。貴族は国の片腕だろうが。」
連れて行ってやるとは言われたが、リシェアに会うまではこの少年を信用したわけではない。
自分を散々な目で見ていたこの子供を次の日に信用しろと言うのはあまりに笑える話である。
−そのくせ態度は偉そうだしよ…。
この子供は本当に単純そうでもあるが気難しい。
何とも扱いづらいそれに溜め息すらつきそうである。