短編小説
□「NOIZE」
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――立てられた墓標は母と同じものにした。
ジュアンが父の死を聞いたのはあの日より幾日も経たない内に噂話と気遣う言葉で理解をした。
何も言わずにいたセシルはジュアンに謝ったが、どう反応していいかが分からずにジュアンはただ立てられた墓標を見つめていた。
―突然過ぎるだろ…親父…。
勝手に子供一人残していくなんて、何て奴だと墓標に向かい言ってやったが、返されるはずも無くジュアンはただ、母の墓標に捧げる花と同じ花を父の墓標へと捧げた。
知人だけの寂しい葬式ではあったが、誰もが父を思い泣いていたことに些か驚き自分が泣けないことに何の疑問も感じずにいた。
乾いた涙などありません、とセシルが葬式の終わりに言っていた。
つまり、セシルから見ればジュアンは泣いていたのだろう。