Hyotei
□密行キャロル
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「なぁ、全員でお参り行かねぇ?」
「お、いいやん、それ」
「面白そうだC!」
<密行キャロル>
話はまとまり、レギュラーは全員行くことになった。
待ち合わせは11時半に氷帝学園の近くの公園。そこから徒歩で神社に向かう計画。
(約一名はベンツがどうの…と言っていたが皆無視。)
そして現在、午後11時公園前。
「…早すぎましたね」
「あぁ、少しな」
満天の星空の下、そこにいるのは跡部と日吉のみ。
寒さが分かるほど、二人の吐く息は白く消える。
「寒いか?」
「…大丈夫です」
跡部は日吉の首に巻かれているマフラーを顔まで上げ、頭を撫でた。
その動作に日吉は睨みつけながらも傾向はしない。
それに気を良くした跡部は日吉を抱きしめようとすると。
「おいおい、公共の面前でいちゃつくんじゃあらへんよ…」
「くそくそ、最後までこれかよっ」
「そうだC!ひよー会いたかった!」
「ジロー!日吉に抱きつくな!」
忍足、向日、ジローがやってきた。
だからバカップルは…と呟くD2と、日吉に飛びつくジロー。
「わっ、芥川さん…よく起きてきましたね」
「うんー、がっくんと忍足がたたき起こしてね〜」
「ジロー起こすんも一苦労やわ」
「もっと優しく起こして欲しかったC〜」
「ジローはそんなんじゃ絶対起きないだろーが!」
いつもと全く変わらない会話に日吉はちょっとだけ安堵した。
この日常が、煩くてうっとおしくて、それでもちょっと面白くて。
そのあと続々といつものメンバーが来て、神社に向かうことになった。
今年も、あと30分で終わりを告げようとしていた。
「わー、すごい人が居ますね」
「あぁ、すげぇなこりゃ…おい忍足ー!あと何分だ?」
「えっとな…あと、10分くらいやな」
「もうすぐだね〜」
神社は人が溢れ返っていた。
新年を迎えるための準備は皆揃っているようだ。
そんな中、日吉は隣に居る人物に困っていた。
「跡部さん…手、離してください」
「あーん?いいだろ、別に」
「人が見てるかもしれないじゃないですか!」
「誰も見てやしねぇよ」
いつも強引で我侭な恋人に振り回される。
日吉ははぁ、とため息を洩らし手を解くのを諦めた。
本当は気付いているのだ、2人共。
それが唯の照れ隠しということに。
跡部は分かっているから、ふっと笑いまた頭を撫でた。
「今年も終わるな」
「そうですね」
「来年も、俺はお前がずっと好きだ、絶対に」
「ッ…」
「くくっ、可愛いやつ」
喉を鳴らして低く笑う跡部に、日吉の心臓は大きな音を立てていた。
真夜中になろうとしている闇と電灯で日吉の顔が赤くなっていることが跡部の瞳からも分かった。
これはきっと、寒さの所為ではない。
「あと1分――」
ざわめきが大きくなる。
ジローや岳人は瞳をきらきらさせてカウントダウンに備えている。
その後ろで忍足、宍戸、鳳は見守っていて。
どうか、この日常が続きますように。
ずっと繋いでいた跡部の手をぎゅっと握る。
跡部はちょっと驚いた顔をして、またすぐに笑った。
「3――」
誰かがカウントをしている。
その声にあわせて、たくさんの人の声が重なる。
「2――」
カウントの合唱を聞き入っている日吉の肩を叩く。
「1――」
振り向いた瞬間、きれいな蒼い瞳が間近に迫っていて。
「ハッピーニューイヤー!!」
人々の賑わいに隠れて、キスをした。
まるで誓うかのように。
「愛してる、今年も、ずっと」
(あーあ…ホンマにラブラブや)
END.
* * * *
(あとがき)
新年早々ラブラブな跡日^^
A HAPPY NEW YEAR!
08.12.31〜09.01.01