Hyotei

□ひとつの机
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「ぜってー、終わんねー…」


ぽつりと呟いた俺の声は多分、向かいに座る日吉くんには聞こえてないんだろう。
黙々とノートにきれいな字で計算式を解いている。

「ん?なんだ、終わったのか?」

「終わんないです…」

俺の眼下に広がるのは大きらいな英語。
大すきな日吉くんが傍にいれば少しは頑張れるだろう、ということで協力してもらってるわけ。
だがしかし。

「なんだよ…全然進んでねぇじゃねえか」

「うぅ…だって、難しいんだもん」

「だってじゃねえ」

あ、ちなみに日吉くんが図書館でやった方が集中できるってことでここは図書館。
だから俺たちの会話も小さくなっている。
勉強に集中しないといけないのは分かるんだけど、日吉くんがいると余計に集中できない。いろいろと。

「はぁ…しょうがねぇ」

ため息を洩らし、どこが分かんないだ?と聞いてくる。
これはもしかして、教えてくれるってことなんだろうか。

「あー、全部?」

また向かいから盛大なため息が聞こえたが気にしない。
こうして、日吉くんのスパルタ学習が始まった。




「…おわったぁー!」

「静かにしろ」


日吉くんのスパルタ学習のもと、ついに宿題が終わった。
(といっても、普通にわかりやすかったけど)
日吉くんのちょっと冷たい視線が突き刺さったけど気にしたら負けだ。

「ありがとう、日吉くん」

「あぁ」

ちょっと照れたように視線を逸らす。
あぁ、もうなんて可愛い反応をしてくれるんだ。
日吉くんは「本、探してくる」といって席を立った。

「んーっ…つかれたー」

ぐっと凝った肩を伸ばす。
この英語さえ終わればあとはなんとかなる(多分、)
一息つき、日吉くんを待つも、

「(おそい、日吉くん…)」

安堵のためか睡魔が襲ってくる。
机に伏せ、視線だけ動かして日吉くんの姿を探すが無情にも瞼は鉛のように重い。


「遅くなった…って、寝てやがる」

日吉くんが戻ってきたときには俺は既に夢の中。
どこか遠くで、日吉くんの声が聞こえた。

「んー…ひよし、くん?」

「あぁ、まだ寝てていいぞ」

「わかった…ちゃんと、起こ、してよ…」


ふっと日吉くんが笑ってるように見えた。
いつものひねくれた笑いじゃなくて、もっときれいな、微笑み。


「おやすみ、切原」


そして俺は、瞼を閉じた。



END.

*  *  *  *

(あとがき)

赤也の寝顔を微笑ましく見て読書する日吉


08.12.26

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