Hyotei

□BIRTH KISS
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「……なんですか」

「今日、お前の誕生日だろ?」

「祝ってやろう思ってなぁ」

「…遠慮します」



【BIRTH KISS】



今日は日吉が生まれた日で。
知っている人に会えば何かしらのお祝いの言葉がかかってきた。
それを迷惑だとは思わない。
仮にも好意で祝ってもらっているのだから。
だが、この2人だけは違う、と日吉は思った。


「…だから、なんで俺を捕まえようとしてるんですか」

「俺様が来いっつったら素直についてくるか、あーん?」

「ヒヨは素直じゃあらへんからなぁ、その辺の考慮はせんと」

「……怒りを通り越して呆れました」


少し前、日吉は2人の先輩…もとい変人と校内鬼ごっこをしていた。
2人はこんなときにだけ素晴らしき団結をみせ、じわじわと日吉を追い詰めていく。
日吉は全力で逃亡を図った。
――が、無情にも。

「さーて…見つけたで、お姫様」

「お前は変に逃げ足が速いな…楽しませてもらったぜ」

そのときの2人のにやりと笑う顔に、ぞくっと背筋に悪寒が走った。
一体この人たちは自分をからかって何が面白いのか。
真剣に考えるも答えは出てこない。
…跡部と忍足の想いは、なかなか伝わらないのだ。


「…くそ、明日はアイツの誕生日だ。ここで一気にケリをつけようじゃねぇか、忍足」

「別に構わへんけど…ヒヨ、気付いてくれるんか?」

「問題はそこだ。…日吉は鈍いからな」

「なんであそこまでやっとるのに気付かへんのかなぁ…ま、そこも可愛ええけど」

「…とりあえず、2人で協力してアイツに気付かせる」

「跡部が協力なんて…まぁええわ。その案、乗った」


という経緯で日吉を捕まえることになったのだが。
日吉はまったく気付かない。
というか、だんだん引いた目で2人を見つめている。

「日吉、今日は俺様の家に来い」

「いやいや、ひよは俺んち来るよな?」

「どっちも行きませんけど」

不気味な笑みを浮かべながら日吉に迫る。
日吉は一歩ずつ下がっていく。

「はぁ…俺はただ、お前の誕生日を祝いたいだけなんだよ」

「じゃあ普通におめでとうって言えばいいじゃないですか」

「それじゃ意味ないんよ。…今日は、一年に一度の日やから」


無理矢理気付かせる作戦はあきらめた模様。
忍足は深いため息を洩らし、その場にずるずるとしゃがみ込んだ。


「こんなことしなくたって、充分なのに…」


え?と跡部と忍足は同じタイミングで日吉を見る。

「だから…その、もう気持ちだけで、充分ですから」

恥ずかしいのか、顔を赤くしてぽつりと呟いた。

「え、それって…」

「…いい意味で受け取っても、いいんだな?」


一気に2人の顔が輝く。
ようやく希望の光が見えてきたのだ。
2人は顔を見合わせ、妖しく笑う。

「「日吉」」

低音の声が重なり、想い人の名を呼ぶ。
振り返ると両手首を掴まれバランスを崩した。

「ちょッ…な、んですかっ」

跡部は日吉の右頬、忍足は左頬にキスを落とす。
そして、精一杯の気持ちを伝えるのだ。


(誕生日、おめでとう)


END.

*  *  *  *
(あとがき)

日吉誕生日おめでとう!
ずっとずっと大好きです


08.12.15

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