Hyotei
□ポッキー日和
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「なんでまたそんなにポッキー抱えてるんですか…」
「今日はポッキーの日だからねー、ひよも一緒に食べよ?」
○ポッキー日和○
今日は11月11日。
TVの宣伝なんかで「ポッキーの日ですね」なんて誰かが言っていたな、と日吉は思った。
「…結構です」
「Aー?せっかくだから、ね?」
授業中に芥川から来たメールには、一言。
『屋上に来て』
授業を終えた日吉は急いで屋上にやってきたのだ。
重たい扉を開ければ、ポッキーの箱が散乱している。
その中に、金髪がひとり何かを頬張っているのだった。
「…それにしても、すごい量ですね」
話題を逸らすように日吉はこのポッキーの箱に目を向けた。
「でしょー?こんなにもらったのも初めてだC」
幸せそうにパクパクと細長いチョコを食べ続けながら、おいでおいでと手招きをする。
日吉は無言でポッキーを頬張る芥川の隣に座った。
「いま全部食べなくたっていいでしょう?もうちょっとゆっくり食べてください」
「うん、わかったCー」
そう返事しながらも口に運ぶスピードは変わらない。
日吉はひとつため息を吐き、おいしそうにポッキーを頬張る恋人を見つめた。
「ひよ、これならあんま甘くないかもー」
と、差し出してきたのは抹茶味のムースポッキー。
一緒に食べよ?と上目遣いで日吉を見上げれば、ほんのり顔を赤く染めながら甘い香りのする箱を受け取った。
「はい、あーん」
「え、ちょッ…あく、んっ」
抵抗も虚しく、強制的にポッキーを押し込まれちょっぴり涙目になる日吉。
いつ袋の封を切ったんだ、と心の中でツッコんだ。
「どお?美味Cでしょー?」
「…ん…まあまあですね」
とたんに笑顔になる。
きっと傍から見れば微笑ましい光景なのだろうか。
少なくとも今は誰も見ていないし、こののんびりとした時間も悪くはない。
と芥川の横顔を見ながら思った。
「(甘いチョコはあまり好きにはなれないけれど)」
そんな思考を断ち切るように、授業開始のチャイムが鳴った。
「え、授業…っ」
「もう間に合わないCー、だから、もう少しここにいよ?」
赤い顔を隠すように、日吉は視線を背けた。
それを了解の合図ととった芥川は、にこっと笑ったのだった。
(ね、ポッキーゲームしよっか!)
(かなり遠慮します)
(いいじゃん!ねーひよー)
(嫌ったら嫌です!)
―END―
* * * *
(あとがき)
ポッキーの日を記念して。
08.11.11