Hyotei

□隣の席
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「じゃあ、くじ引きでいいなー」

はーい、と元気な返事が聞こえた。
鳳と日吉のクラスは席替えだ。
席替えともありざわざわと生徒の話し声が聞こえる。


「日吉、隣になれるといいね」

「…嫌だ」

「えっ、なんで?」

「授業に集中できないだろ」

「え、なんで?」

「お前が犬のように…」

「や、もう言わなくていいよ」


そっぽを向きながら(そして楽しみながら)話す日吉と、
犬のように付きまとう(?)鳳のペアも相変わらずだ。


「ほら、早く引いてこいよ」

「神様〜…」


鳳はいつもつけている十字架を握り締めながらくじを引いた。
それに続き日吉もくじを引く。


「…ど、どうだった?」

「どうやら前のほうらしいな」

「あ、俺も…前のほう?」

混雑している黒板を見ようと鳳が顔を上げる。

「んーと…前から、3番目?」

「俺は…どこだ?」


黒板の図を見ようと日吉も目を細める。


「「……あ」」


見事にハモった。
きっと、それは。


「日吉のくじ、見せて」


鳳は自分の持っていたくじと日吉のくじを照らし合わせる。


「…隣だな」

「や…やったぁ!」


顔を見合わせ、一気に笑顔になる鳳。
微妙に満更でもなさそうな日吉。


「神様のおかげだ…!」

「ついに脳内まで溶けたのか?」

「嬉しいなぁ、ね!日吉」

「はぁ…」


相変わらず毒舌だな、でもそんな日吉も可愛いよと耳元で囁いた。
一気に顔が赤くなる日吉。
なにか反論をしようと試みてはいるが、言葉になっていない。


「ふふ、可愛いな…」

「おま、え…ここどこだと思ってッ」

「大丈夫。誰も見てないよ」


ざわついた教室だから余計危険だろうが、という反論も下手にできない。
その状況が日吉の羞恥心を煽り、耳まで赤く染めた。

新しい席に座り、見慣れた教室からの視点が変わる。
隣には、いつものペア。


「これからよろしくね、日吉」

「…あぁ」


笑顔と、仏頂面の顔が並ぶ。
いつもの、見慣れた顔。
隣に居る、存在を意識しながら黒板に視線を向けた。


『鳳が前に来たら、後ろの奴黒板見えないんじゃないのか?』

『あぁ…そうかも。』

『代わってもらうか?』

『この席を譲る気はないよ、だって俺の特等席だもん』

『――ッ』



―END―

*  *  *  *
(あとがき)

絶対迷惑男な鳳。
ちょたの後ろの人は憐れ←


08.10.29
09.01.11加筆

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