Hyotei

□Prater
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なんで、君と過ごす時間の流れは速くなるのだろう。

「ほら、鳳…帰るぞ」

「うん、わかった」


帰り道を夕焼けがオレンジ色に染める。
一緒に勉強して部活に出て、ちょっとお喋りしてるとすぐに時間は流れる。


「もう、夕方はちょっと寒いね」

「あぁ、そうだな」


身を切る風がだんだん冷たくなってくる。
オレンジ色の空はキラキラと輝いていて、君の横顔も夕焼け色になる。


「夕焼け、きれいだね」


歩調を緩めながらそう云うと君は夕焼けに目をむけ、眩しさに目を細めた。
本当は夕焼け色に染まる君を見たかったんだ。

―なんて、云ったら君は顔を赤くしながら何か皮肉を言ってくるんだろうな。
君の照れている顔が容易に想像できて、思わず苦笑を洩らした。

「…きれいだな」


そう云ってどこか遠くの空を見上げる。
何故か俺には君が空に消えちゃいそうな気がして。
考えるより先に、君を抱きしめていた。


「な、なにす…んっ」


喋りかけた君の唇を自分の唇で塞ぐ。
しばらく経てば君がどんどん、と弱弱しく俺の胸を叩いた。


「はぁ…ッ、おまえっ…ここどこだと思ってんだよッ」


顔が赤く見えるのは、夕焼けだけの所為ではないだろう。


「大丈夫。誰も見てないよ」

「そういう問題じゃねぇッ」


瞳に涙を溜め、きっと俺を睨んでくる。


「(こんな顔も可愛い、なんて云ったらもっと怒るだろうな)」


軽く笑って視線を受け流す。
こんな時間が、ずっと続けばいいのにと思う。
だけど、それは神様にも叶えられない望みで。
夕焼けが、だんだん傾いてきた。


神様にも叶えられない望みだったとしても、願わずにはいられないんだ。


「ねぇ、日吉」

「…なんだ」

「大好きだよ」


君がいない時間なんて考えられないから。
時間は止まることを知らなくて、だからせめてこれだけは。


「日吉は?俺のこと好き?」

「〜〜〜っ、」

「え?聴こえないよ」

「ッ、好きだよっ」


顔を真っ赤にして俯く君が愛しくて。
神様、時間は止まることを知らない。
だから、どうか。



「…愛してるよ」



(どうか神様、ずっとこの人と一緒に居られますように)



―END―

*  *  *  *
(あとがき)

恥ずかしい台詞をサラッと言えちゃう長太郎。
日吉はその度に赤面萌え!


08.10.12
09.01.11加筆

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