Hyotei

□本心
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「いい加減、自分の気持ちに素直になったらどうだ?」


青空の空の下。
俺は胸が締め付けられた。


「………」

「好きなんだろ?認めろよ」


そう言ってふっと笑った顔が太陽に照らされて。
全ての視界が、一色になった。
それは数時間前に遡る。


『なぁ、ヒヨはいつ告るん?』

『は?…誰にですか』

『跡部に決まってるやないか』

『寝言は寝てから言ってください』

『ほんとは好きなんやろ?』

『…黙ってください』


唐突に言い当てられ、内心は心臓がどくん、と大きく跳ねた。
驚いたのは、きっと忍足さんが言っていることは本当のことだから。


『跡部も、待っとるみたいやで』

『何を待ってるんですか』

『ヒヨが自分の気持ちに素直になること』

『…くだらないですね』


その場を逃げるように立ち去った。
そして誰もいないコートに足を運ぶ。
この心臓の高鳴りは、きっと走ってきたから。
そう理屈をつけながら。


「……はぁ」


コートに着いたはいいが、道具は何一つ持ってきていない。
仕方がないので観覧席に座り、青空の下静まり返ったコートを見つめていた。
忍足さんの言葉が頭からこびり付いて離れない。

自分だって薄々は気付いてる。
ただ、認めたくないから。

だから目を背けているのだ、本心から。
眩しい太陽と青い空は俺の気持ちを晴らしてはくれない。


「……はぁ」


自然とため息がでる。
ため息をつく分だけ幸せは逃げていくというけれど、いちいちそんな迷信に構っていられない。
もう一度、深いため息を吐く。
すると突然、後ろから声が聞こえた。


「何やってんだよ」


後ろを振り返ると、そこには。


「あ、跡部さん…?」

「ここにいたのか」


太陽が反射して、跡部さんの蒼い瞳がきらりと光る。


「忍足から聞いたぜ」

「…何をですか」


この動揺を隠して、できるだけ冷静に答えた。
―もっとも、この人の眼力には通用しないと思うが。


「どうやら俺様の美技に酔ったってな」


何故、この人はこんなに自信に満ち溢れた表情をすることが出来るのだろうか。


「いい加減、自分の気持ちに素直になったらどうだ?」


にやりと笑いながら俺に近づいてくる。
今だけは、この蒼い瞳を直視できなかった。


「…好き、なんだろ?」


目の前は直視できなかった蒼い瞳。
唇には何かが当たる感覚。


「…好きだ、若。俺様のモノになれ」


そう言うと壊れ物を扱うように優しく抱きしめる。
跡部さんの胸の中は暖かくて。
恥ずかしさと嬉しさで力強く腕を回した。


「!…で、返事は?」

「ーッ」

今でも恥ずかしいのに、もっと羞恥心を煽る事を言わせる気か。


「…す、好き…ですッ」


俺の顔の上から小さな笑い声が聞こえたかと思えば、


「…愛してるぜ」



甘い言葉を耳元で囁くのだ。



END.


*  *  *  *
(あとがき)

ずっと跡部様のターン!
おったりは恋するひよちゃんを堪能してました^^
これからはぐんと色気が増すと思います



08.11.
09.01.11加筆

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