Hyotei

□MEET YOU!
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「ああぁぁー!!もうダメだぁぁ!!」


コート内に俺の叫び声が木霊した。

「なんだよぃ、うるせーじゃねぇかいきなり」

「丸井先輩、俺、もうダメです」

「何がダメなんじゃ?」

「日吉若に会いたいと思っている確立100%だな」

「そーなんっす!会いたくてたまんないッすよ!!」

「「「…無理だな…」」」

「…ですよね…」


がっくりと肩を落とし、はぁ、とため息をつく。
会いたい。顔が見たい。
しばらくお互いの都合が合わずに最近は顔を見ていないのだ。

「また、なんでそんなに突拍子のないことを言い出すんじゃ?」

「仁王先輩には言われたくないッスよ!」

「まぁまぁ、で、何でいきなり会いたくなったんだい?」

「「「ゆ、幸村(部長)!!?」」」

いつの間に来たんだ。さっきまではいなかったのに。


「…赤也?」

にっこりと笑ってはいるが、禍々しいオーラが俺には見えた。


「は、はいッ!…えっとですね、なんか、よくわかんないっす」

「は?よくわかんねぇだと?」


本当によくわからない。
日吉くんの事を考えてたら(いっつも考えてるけど)…

「はい、最近会ってないなーって思ったらなんか急にぶわーって」

これはきっと日吉くん禁断症状だ。そうに違いない。


「ふふ…赤也らしいね」

「なんじゃそれ…本当にお前さんらしいのぅ」

「そ、それって俺がガキっぽいってことッすか?」


他人から見れば子供じみたことかもしれない。
だけど、俺にとっては一大事なんだ。


「…幸村部長!!俺を早退させてください!」

「…それはいくら赤也でもいけないよ」

「お願いします!!」

「弦一郎にバレたら、どうするの?」


そうだった。真田副部長は学校の仕事であとから来るって言っていた。

「うっ…潔く真田副部長の鉄拳を受けます!」

鉄拳だってなんだって受けてやる。
今は日吉くんに会うことが最優先だから。


「まったく…もう少しだけ、ここにいなよ」

「へ?」

「もう少しだけ、ここにいたら早退していいから」

「まじっすか?!」

「あぁ、弦一郎には俺から言っておくよ」

「あ、ありがとうございます!!」


幸村部長の言っている意味はよく分かんないけど、あとは待つだけだ。

「よかったのぅ、赤也」

「はい!言ってみて正解でした」

「真田だったら『たるんどる!』って言って終わりだろぃ」


あぁ、今すぐに会いたい。
もう少しってどれぐらいだ?


「幸村部長ー!」

「なんだい?赤也」

「もう少しってどれ位ですか?」

「そうだね…あと、5分ぐらいかな」

「わかりました!」


あと5分で会える。
そう思うと自然と顔が緩む。
きっと氷帝に行ったところで日吉くんは迷惑そうな顔をするんだと思う。
だけど、そんな顔ですら嬉しく思うんだ。

「…赤也!」

誰かがすごい剣幕でコートに入ってくる。
めちゃくちゃ嫌な予感がする。


「赤也!お前という奴は…黙って部活をサボろうとしたらしいではないか!」

あぁいうのを鬼の形相って言うのかな…とどこか冷静な気持ちで副部長を見た。

「ち、違いますよ!!幸村部長に聞いてくださいって!!」

「部活をサボるなど言語道断!」

結局は鉄拳を喰らうのか。
その代わりに日吉くんに会えるなら本望だ。
と潔く抵抗を止めて目を瞑り制裁を受けようとした。



「…切原!」

遠くから日吉くんらしき声が聞こえた。
ついに幻聴まで聴こえるようになったのか、俺。
なかなか鉄拳が来ない。おかしいと思い目を開ける。

「切原っ!」

俺の名前を呼びながら氷帝のジャージを着た生徒がこちらに向かってくる。
いま、会いたいと思っていた人が目の前にいる。
幻覚を見ているのか、俺は。
まさか、ここまで来る筈がない。

「ひ、日吉…くん?」

恐る恐る名前を呼んでみる。
もう既に、顔がばっちり見えるほど距離は縮んでいた。

「あぁ、そうだ。お前、何悪いことしたんだ?」

普段は無表情なのに、今は心配そうな顔をしている。


「……日吉くーん!!」

なんだか嬉しくて、思わず日吉くんに抱きついた。


「うわっ…この、バカ切原!」

ゴン、といい音と共に頭に激痛が走った。

「いってぇ!!…ひどいよ日吉くん!」


痛かったけど、目の前に立っている日吉くんは消えない。

「げ、幻覚じゃなかった…」

「当然だろ?何寝惚けてんだ」


本物だってことはわかった。
(この態度は日吉くんだけ!)

「なんでここに居んの?」

いや、嬉しいけど。すっごく嬉しいけど。
滅多なことでは日吉くんは立海に来ないから。


「…跡部さんに、切原が大暴れしたって言われてそのまま車で連れてかれたんだよ」

「…へ?」

「…で、真田さんとなんかやってるの見て…」


一体どういうことだ?
俺は頭にいっぱいハテナマークを浮かべたまま先輩達のほうを見た。

よく見ると俺と日吉くん以外はみんな笑っている。
(あ、跡部さんもいた)

「ふふ…俺が説明するよ」

「どういうことっすか?」

「まず俺が跡部に電話を入れて…それからちょっと弦一郎に芝居をしてもらっただけだよ」


そしてまたふふっと笑った。
なんだか何時にも増してさわやかな笑顔だ。


「ったく…いきなり日吉を連れて立海に来いってよ…」

「こっちだって驚きましたよ!半ば拉致じゃないですか!」

なんだ。そういうことだったのか。

「むう…いつもどうりに赤也を叱れ、というのも難しかったな」

「副部長もひどいッすよー!!」

「かわいい後輩のために黙っててやったんじゃろ?」

「ま、まさか仁王先輩も知って…?!」

「プリッ」


日吉くんが呼び出された理由は納得いかないけど。
日吉くんに会えたからそれでいい。


「日吉くん!俺、会いたかった!!」


もう蹴飛ばされたって離れるもんか、と日吉くんに抱きつく。
ようやく会ったんだからな。


「……も」

「ん?なに?」

くっついていないと聴こえない声の大きさで何かを呟いた。


「俺も…会いたかった」
恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤に染める。


「…日吉くん大好き!!」


可愛くて可愛くて。
お返しに熱を持ったほっぺにキスをした。


―END―


*  *  *  *
(あとがき)

別題〜切原赤也の奮闘


08.10.08
09.01.09加筆

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