□絆
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……寒い。
凍死しちまいそうだ。
寒空の下、返り血を浴びた服を身にまとった銀時は呟いた。
しかしその声は誰かに届くこともなく、ただ闇へと吸い込まれていく。
立ち上がろうと足に力を入れるが、動かない。激しい痛みが銀時を襲う。
……やっぱ折れてんな。
次に、もはや自分の血で染まっているのか相手の血で染まっているのか分からなくなった両手を、開いたり閉じたりしてみる。
左手は動くが、右手は持ち上げることすら出来ない。
「右腕と両足の骨折か……ヤバいな」
足が無事なら走れる。手が無事なら登れる。
戦において手と足を失うことは非常に不利だが、どちらかが丈夫のままならばどうにかなるものだ。
しかし今の銀時の場合は走ることも登ることも、蹴ることも殴ることも出来ない。
利き腕を失ってしまったことも、かなり痛手だ。
出来ることといえば刀を振り回すくらいだろうか。
そして銀時がいる場所は崖の下である。運が悪ければ誰にも発見されぬままかもしれない。既に日は暮れ、山の気温はどんどん下がっている。
「あー……寒い」
銀時はハァ……、と溜め息をついた。
「……ったく、何でこんなトコに落ちちまったんだ。俺らしくねェ」
一人ぼやいてみても、やはり誰にも届かない。
「さみぃ……」
幾度となく繰り返すこの台詞。
骨折箇所の痛みよりも気温の低下の方が銀時にとって気がかりだった。
この時間から朝方にかけてが一番冷え込む。果たしてそれを乗り切れるだろうか。
体力的にも精神的にも限界が来ていた。
「ヤベェ……眠……い」
さらに、疲れからか眠気まで襲ってきた。
寝るな寝るな寝るな。
そう自分に言い聞かせるが、瞼はどんどん重くなっていく。
「寝たら、確実に死ぬ」
頭ではそれが分かっているが、遂に銀時は眠気に勝てなかった。
月がちょうど真上に来たとき、銀時は意識を手放した。
……大丈夫だ。
アイツらが、きっと俺を見つける。
そうだろ?
だから…
早く…来…て…くれ…。