Novel

□世界で一番
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「隼人が…」
「獄寺が、どうかしたのか」
「さっき見かけたんだけど、いつもと様子が違ったから気になって…」

ああ、そうか。そういうこと。
何だか雲雀の様子がおかしくて、つい笑ってしまった。

「要するに、心配してくれたのな」
「なっ…!僕は別に」
「違うのか?」

からかうように言うと、雲雀はちっと舌打ちをしてそっぽを向いてしまった。
こいつも素直じゃないよな。

だからこそ気が合うのか、獄寺と雲雀が仲よさ気に話している場面は何度か見たことがある。
その度に嫉妬してしまう自分がいたけれど。

「多分、今日は晴れてるから余計思い出しちまうんじゃねえかな」
「沢田…綱吉を、か」
「ああ。だから心配ない」

オレが笑ってそう言うと、雲雀は少しほっとしたような表情をした。
その感情が何なのか、雲雀は多分気付いていない。
でも、それを教えてやる程オレも昔のようにお人善しじゃない。

オレ達はもう大人で、自分で考えて自分で答えを見つけるしかない。

「なあ。お前は思い出すか?この空を見て」

ふと聞きたくなって、目の前の雲雀に問う。雲雀はオレの問いにゆっくりと空を煽って、それから静かに目を閉じた。

「…さあね。彼が死のうが、僕には直接関係のないことだ」

そう言うと思った。雲雀らしい答えに思わず苦笑が漏れる。

それでも、次の瞬間笑いが引き攣ったのは、微かに目を開けた雲雀の頬を伝い落ちていく涙に気付いたから。

「ただ、少し……滲んで見える」

ああ、ほら。結局みんな、強がって生きている。
大人だからって、そんなに強い訳じゃない。
それでも、強がって見せないと全部、崩れ落ちてしまいそうで。

しばらく、お互い黙り込んだままただ空を見上げていた。

「おーい、山本ぉッ!!」
「…先輩」

何分立っただろう。ふいに了平先輩の声がして、オレ達ははっと我に返った。
随分切羽詰まった声色。明らかにただ事ではない。
見れば、顔面蒼白で目を見開いた先輩が、息を切らしながら立ちすくんでいた。

「ど…どうしたんすか!?」
「今…沢田の、所に行ったら…タコ頭…ご、獄寺が、倒れていて…」
「えっ!?」



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