Novel
□花嫁志願
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部屋に入って数分後、下の階からは派手に物が倒れる音や壊れたような音が響いている。
大丈夫かな。少し心配になってきて見に行こうかと立ち上がりかけた時、こんこんと部屋の扉が叩かれた。
「?はーい」
「失礼します、お掃除に参りましたっ!!」
扉が開かれて入ってきたのは、掃除機を手にした獄寺君。さっきの物音はこれのせいか…。
「えっ…獄寺君が掃除してくれるの?」
「はいっ!任せてください」
そう言うと腕まくりをして勢いよく掃除機の電源を入れる。その豪快な後ろ姿を見ていると、不安でいっぱいになる。
「あっ待って!そこら辺物がいっぱいあるから、先にどけて…」
「あ」
ズゴー。早速何かを吸ったらしい音が部屋に響き渡る。音的には結構でかい物。
何だ、何吸ったんだ。気になって後ろから覗き込むと、獄寺君がにかっと笑って振り返った。
「すいません、消しゴム吸っちゃいました」
何してんだー!!もう、任せてらんないよ。
我慢出来ず自分で片付け出したオレを見て、獄寺君が真剣な表情で制す。
「10代目!10代目は座っててください。オレが片付けます」
「え…あ、そう?」
無理やり座らされ、やることもないのでせわしなく動く彼の後ろ姿をぼんやりと眺めてみる。
このエプロン、妙に似合ってるな。動く度にフリルが揺れてちょっと、いやかなり可愛い。
今気付いたけど、邪魔にならないように前髪を上げて後ろで髪くくってるのも可愛いな。
目の前で小さいお尻が揺れて、ちょっと触ってみようかなとか考えていると、ベッドの下を覗いた彼の動きが急にぴたりと止まった。
「10代目。これって…」
「え?」
そのまま這っていって後ろから覗き込んだオレの動きもぴたりと止まる。獄寺君はベッドの下にあった数冊の雑誌の中から、一番上にあった一冊を手に取って爽やかに笑った。
「エロ本ですか?ベッドの下とはまたベタですねー」
「うわあぁああ!!」
思わず叫びながら獄寺君の手からばっと雑誌を奪い取る。
み、見られた…。
オレの態度に獄寺君はおかしそうに笑う。
「別にいいじゃないっスか。中学生なんて、みんなこんなもんですって」
「もっもう掃除はいいよ!いいから出てって!!」
半ば強引に押し出して、オレは獄寺君を部屋から追い出した。閉めた扉の向こう側から「10代目!」と焦ったような声が聞こえてきたが、無視無視。
しばらくすると去って行く音が聞こえて、扉にもたれていたオレはそのままずるずると座り込んだ。
もう、獄寺君て何でああいらんことしいなんだろう。
人には見られたくない物とか、踏み込んでほしくない領域があるってのに。
やっぱバカだから、わかんないのかな。
この時点で大分頭にはきていたが、この後もオレは獄寺君の馬鹿馬鹿しい修業に振り回されることとなる。