Novel
□最強おバカ
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「それは、さ…マフィアのボスとして…?それとも、」
「ええ、勿論。ボンゴレ10代目ボスとして心からお慕いし、何処までもついていく所存です」
あーやっぱり、って思った。ちょっと期待してしまったから尚更。
熱かった身体から熱がすーっと引いていくのがわかった。
やっぱり、獄寺君にとってオレはそんな存在でしかなかったんだなって。冷めた頭の中でそう思った。
「10代目…?」
急に表情のなくなったオレを見て、獄寺君が心配そうに声をかけてくる。誰のせいだよ。何だか知らないけど、さっきまで可愛いと思えた仕草も、今は無性にイラつく。
どす黒い感情が一気に溢れ出てきて、よくわからない気持ちのまま、オレは彼の目の前に自分の鞄を突き付けた。
「10代…」
「重い。持って」
「え?…あっ、はい!」
戸惑いながらも言われた通りに鞄を持つ獄寺君。そりゃボスの命令だもんね。彼が逆らうはずがないんだ。
「じゃあさ。オレにキスしてみて」
「えっ?」
「聞こえなかった?キスしてって言ったの」
目を丸くして固まる彼にもう一言「大好きなんでしょ?」。獄寺君はしばらく泣きそうな顔でこちらを見つめていたが、有無を言わさない瞳にやがて観念したように目を伏せた。
「あ、あの…目は閉じててくださ」
「命令するの?」
「いや、あの…そういう訳ではっ」
苛々して「早く」と促したら、意を決したようにゆっくりと肩に手を置いて顔を近づけてきた。すごく震えてる。肩に置かれた手から痛い程伝わってくる緊張感。
少し潤んできた瞳は、オレがじっと見つめているのに気がつくと、半ばやけくそ気味に自分の唇をオレのそれへと押し付けた。
一瞬触れ合っただけですぐに離れようとした獄寺君の後頭部をすかさず掴んで引き寄せる。くぐもった吐息が漏れて、口付けがより深いものに変わった。
「んッ…!」
舌を入れられるとわかったのか、獄寺君は口を真一文字にして意地でも開かないといった感じだ。すごい強情。
仕方なく唇を離して耳元で「口開けてよ」と囁くと、今にも涙が零れ落ちそうな目を見開いた後震えながらゆっくりと微かに口を開けた。
と思ったら急に我に返って。
「まっ待ってください10代目…無理です!ここでは無理です!!」
「…何で?」
「だってここ校門だし、いつ人が通るか…!」
確かに。忘れかけていたけど、オレ達が止まっていたのは丁度校門の手前ぐらいだった。この時間、通る人がほとんどいないとはいえクラスの奴らにでも見られたりしたら大変かも。
「んーじゃあ、ここではやめとこっか」
オレがそう言った途端獄寺君の顔がぱあっと明るくなる。そんなに嫌だった?
つづけて「続きはあっちの公園で」と言うと、あからさまに青ざめた。
「あ!後さあ、もう一つお願いがあって」
「な、何ですか」
「オレさ、わかると思うけど童貞なんだ。可哀相でしょ?だから獄寺君、一回ヤらしてくれないかなと思って」
途端にこれでもかという程獄寺君の顔が赤くなって、頭のてっぺんから湯気が噴き出しそうな程になった。茹で蛸みたい。