Novel

□全力中学生
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「つーかさっきから何じろじろ見てんだよ、気持ち悪ぃ」
「いやーだって、獄寺があんまり可愛いからつい…」

あ、言っちゃった。
口が滑ってうっかり本音を漏らしてしまった。

反射的に自分の手で口を塞ぐも、既に文章の全てを言い終わってしまっているため全く意味がない。

獄寺怒ってんだろうな、と恐る恐る顔を上げると、そこには意外や意外。茹で蛸みたいに真っ赤な顔をした獄寺が固まっていた。

「なっ…なっななな、何をぬかしてやが…!!」
「へー意外!獄寺でもそんな顔すんのなっ」
「はあ!?」

獄寺のそんな顔初めて見たから楽しくなって覗き込んだら、ますます朱くなって「見んな!」とか言いながら両手で顔を隠した。

あれ?何か…何だろ、この照れよう。無理だと諦めてたけど、もしかしてもしかするといけちゃったりするのか?

思わぬ展開に、嬉しさで身震いがした。もしかして、今までのも全部照れ隠し?
うわー。こいつ、本気可愛すぎな。

「なーなー獄寺」

今だ顔を隠している獄寺に声をかけると、顔の前で交差していた両手の隙間から警戒するようにちらっと目だけを覗かせる。

「…何」
「あのさ、あのさ。オレ、チューしたい」

鼻息荒くそんな言葉を吐いたオレに、信じられないモノを見たかのような目を向けてくる獄寺。
あれ?オレ、空気読めてるよな?もしかして、読めてない?
反応がないため、念の為もう一押し。

「なー獄寺。いいだろ?」

表情が見えなくて不安になり、顔の前にある手を無理やり除けようと掴んだ。瞬間ばっと払いのけられ、やっと見えた獄寺の瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。

えっオレ、そんな嫌がられてんのかよ。正直かなりショック。

「おい!それ以上ふざけたことぬかすと、ここで果たすぞコノヤロー!!」

物騒に花火なんかを出し始める獄寺の顔はやっぱり朱い。もしかして、恥ずかしくて泣いてんのか?
チューするって言っただけなのに。

「もーーっやっぱ獄寺可愛すぎ!!誘ってんのか?」
「ぎゃ!やめやめ!!」
「ヤだ。それと、これ邪魔」

反抗的な態度が全部照れ隠しだとわかったら話は別だ。ここは攻めるが勝ちだろ。
オレは獄寺の顔を隠す邪魔な眼鏡を取り去り、じっと見つめた。

眼鏡もいいけど、やっぱこっちのが断然綺麗だ。銀色の長い睫毛が光に反射してキラキラ光っている。
顔をゆっくり近づけていくと、観念したのかぎゅっと目を瞑った。朱色の頬に影を落とす睫毛がふるふると震えている。
やべー可愛すぎ。

「…獄」
「ただいまー!ごめん遅くなって…って、何してんの二人共」

後数センチってとこでいきなり部屋の扉が開かれ、ツナが帰ってきた。こっちに夢中で、階段を昇る音なんて全く耳に入っていなかったのだ。タイミング良すぎ。



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