Novel

□世界で一番
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オレは野球が大好きだ。
当然、野球漫画も好き。
漫画の中の台詞に憧れることもあった。

あの頃は薄っぺらくて言えなかったけど、今なら言える。



世界で一番



「今日も行くのか」
「……おう」

あの日から毎日獄寺は、一日に何度もあの場所に足を運んでいる。
ツナの棺桶がある、あの森に。

ツナが死んでからの獄寺は、まるで抜け殻みたいだった。魂が抜けたように、一日中ずっと黙って遠くの方をぼーっと眺めるだけ。
辛うじて仕事はこなしているようだが、話しかけても眼は虚ろだ。

オレだって辛くない訳じゃない。
何度も何度も、後悔して涙を流した。
あの時、無理にでも引き留めておけば。行かせなければ、こんな悲しい結末にはならなかったかもしれない。

ツナはきっと、殺されるのを覚悟で向かったんだ。あいつらが交渉してくれる、わずか1%ぐらいの希望にかけて。
その想いを踏みにじったあいつらを、オレは絶対に許せない。

獄寺のことだから、てっきり殴り込みに行くとか無茶なことを言い出すと思った。
なのに獄寺は、何も言わなかった。

あの日から、ずっと雨が続いている。まるでオレ達の悲しみを現すかのように、空も泣いていた。
でも、今日は久しぶりの快晴。暗く沈んでいた心が、少し晴れるような感じがして、気持ちが良い。

それは獄寺も同じかと思ったが、あいつは違った。いつも以上に塞ぎ込んでいる感じで、空ばかり見つめていた。

「全てを包む…大空、か」

本当に、大空みたいな奴だった。
全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空。

なあ、ツナ。
守護者のくせに、ボスを守れなかったオレ達は、何て惨めなんだろうな。
これからオレ達は、一体何を守っていけばいい?

「…山本武」
「雲雀…!」

珍しい奴に会ったもんだ。
声のした方を見遣ると、雲雀恭弥が静かに壁にもたれて佇んでいた。

「どうしたんだ?こんな所で」

群れるのを嫌う雲雀が、自らボンゴレを訪れるのは珍しい。
不思議そうに見つめると、雲雀は言いにくそうに唇を噛んで俯いた。



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