Novel

□花嫁志願
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「おかえりなさいませ、10代目!!」

家に帰ったら何故か、フリフリのエプロンに身を包んだ獄寺君がいた。



花嫁志願



「ご…獄寺君」
「はいっ」
「何してんの…?」

家に帰って普通にリビングの扉を開けたら、獄寺君が満面の笑みで迎えてくれた。玄関に男物の靴があった時点でおかしいな、とは思ったけど。
居残りしていたオレを待っていなかったのもおかしいな、とは思ったけど。
まさか、こんな展開とは。

「あらお帰り、ツッ君!」
「か、母さん…何で」

奥にあるキッチンから母さんが上機嫌で顔を覗かせる。お揃いのフリフリエプロンを身につけて。
ということは、母さん公認か。二人で一体何してんだよ…。
若干頭が痛くなってきて、オレは頭を抱えた。

「10代目!オレ…オレ、10代目のお嫁さんになりたいですっ!!」
「は、はいぃい!?」

この人は唐突に何を言うか。
お嫁さんって、あなた男ですよね。

「獄寺君ったら、面白いのよー!急に家にやって来て、ツナのお嫁さんになりたいだなんて」
「立派な花嫁になるためにはまずは、お母様に花嫁修業なるものをつけていただこうと思いまして!」

母さんは完全に冗談だと思っているみたいだが、獄寺君の目は本気だ。ただ、こんなことになった原因の目星はついている。
彼が急に変なことを言い出す時には、必ずあいつの影があるのだ。

「獄寺君。それ、誰に言われたの?」
「もちろん、リボーンさんっス!!」

…やっぱり。リボーンの意地の悪い笑みが脳裏に浮かんで、頭がますます痛くなる。

「リボーンさんがね、10代目の右腕になるためにはまず花嫁になることだって。立派な花嫁になれた時、初めて右腕として一人前になれるんです!!」
「獄寺君、それ騙されてるよ。花嫁って妻になっちゃうじゃん…」

リボーンもリボーンだけど、獄寺君も獄寺君だ。純粋なのはいいことだけど、こうも毎回遊ばれていると何だか可哀相になってくる。

何がって、騙されているのに最後まで気付かないところが一番痛い。

「さあっお母様!修業を始めてください!どんな辛い修業でも耐えてみせますっ」
「あらあら、頼もしいわねー」
「…聞いちゃいねえ」

もう何かどうでもいいや。オレ、関係ないし。ほっとこ。
ノリノリの二人を横目に鞄を持って上に上がろうとすると、それに気付いた獄寺君がオレを呼び止めて。

「10代目っ!オレ、10代目のために立派な花嫁になりますから見ててくださいねっ!!」

ああ、うん。可愛い。可愛いんだけどね。



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