Novel
□君とランチタイム
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ほら、その顔。
僕は君の顔を見るだけでイラつくよ。
君とランチタイム
「獄寺隼人。君、これで何回目だい」
僕はいつもの応接室のソファに持たれながら、目の前に座る男を見つめた。この派手な頭に制服をこれでもかと着崩した男・獄寺隼人は風紀違反の常習犯だ。
「けっ。じゃあいちいち指導しなかったらいいじゃねーか」
動く度にじゃらじゃらと耳障りな音がする。ああもう、何だいその大量のアクセサリーは!神聖な制服を何だと思っているんだ。
本当、イライラする。
「駄目だね。風紀を乱す者を野放しにしてはおけないよ」
「これ没収ね」とズボンについていたチェーンを力任せに引っ張ると、ぶちっと音を立ててバラバラになったチェーンの残骸が宙に弧を描いて飛んでいった。
「あ゛ーーーっ!!てめえ、何しやがっ…!」
「文句があるんなら、初めからつけてこないことだね。ほら、他のアクセサリーも素直に渡してくれれば、ちぎらないでおいてあげるよ」
僕が手を差し出すと、彼は悔しそうにぐっと堪えた後ゆっくりと身につけていたアクセサリーを差し出した。
よくもまあ、こんなに付けられるものだね。それらを机の上に無造作に置いてから、また彼に向き直る。
「それから、シャツのボタンは第一ボタンまで止めること」
「げっ、それだけは嫌だ!ダサすぎだろ。それに他の奴らだって開けて…」
「君は開けすぎだし何かいやらしいから駄目。風紀が乱れる」
真面目な顔して言ったら、獄寺隼人は呆れたような表情をした後溜息をつきながらおもむろにボタンを止めていった。その指先の繊細さに思わず目を奪われる。
「おい、これでいいだろ」
「ああ…」
僕が頷くと、彼はすっくと立ち上がって扉に手をかけた。
「用は済んだな。じゃあな」
「ちょっと待って。何処へ行く気だい」
僕の言葉に振り返った彼は、眉間の皺をより深くさせて声を荒げた。
「何処って昼飯食いにだよ!昼休み終わっちまうだろーが」
「まだ指導は終わってないよ。ズボンはもっと上げて、上履きはかかとを踏まない。それから…」
「あー、もう!オレは今から10代目とお昼をご一緒するんだ!お前に付き合ってる暇はねえ」
10代目…ああ、あの草食動物のことか。僕にはどこがいいのかさっぱりだが、獄寺隼人は好いているらしい。
そして今から一緒に昼食を食べると。
…何かよくわからないけど、イライラする。
「獄寺隼人。君、昼食はパンを食べるのかい?」
「あ?そうだよ。購買のだけどそれがどうかし…」
全て言い終わる前に、彼に向かってポケットの中から取り出した財布を投げつけた。反射的に受け取った彼は、訳がわからないといった様子できょとんとしている。