Novel
□最強おバカ
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バカな子ほど可愛いとは、よく言ったもんだ。
最強おバカ
「10代目ー!!」
「あ…ああ、獄寺君」
今日だけでも何度呼ばれたかわからない、彼の声。
今日も明日も明後日も、飽きもせず10代目10代目。馬鹿の一つ覚えって、こういうことを言うのかもしれない。
「待ってたんだ…」
「はい!当たり前です。男・獄寺隼人、10代目を一人でお返しするような真似はできません!!」
今だって、居残りしていたオレを下駄箱の前で満面の笑みでお出迎え。しかも無駄に熱い語り付きときた。
獄寺君はぱっと見は不良だけど、決してバカではない。
ものすごく頭が良いし、むしろ本当にバカなのはオレの方。いつもテストで満点オンパレードな彼を赤点オンパレードなオレがバカ呼ばわりだなんて、普通に考えたらかなりふざけた話だ。
でも、たまに。たまーに、この子本気でバカなんじゃないかって思う。
「ささっ、帰りましょう10代目!!」
「あー、うん」
半ば無理やり腕を引っ張られて、外へと一歩踏み出す。途端、頬を過ぎった冷たい風に思わず「寒っ」と身を縮めたオレを見て獄寺君がおかしそうに笑った。
「寒いですか?」
「うん…ちょっと」
「んー…あっ!じゃあ、こうしましょう」
そう言うと獄寺君はオレの手を取ってぎゅっと握った。彼はこういう行動を何の前触れもなく、唐突にやってのける。そのせいでオレはいつも振り回されっぱなしだ。
しかもこれってあれじゃないか。ほら、恋人同士がする…貝殻つなぎ、だっけ?
「手ぇ繋いでたらきっとあったかいっスよ」
戸惑っているオレを余所ににこにこして歩き出す獄寺君の顔は何と言うか、何にも考えてないんだろうなーって感じ。おバカ全開だ。
ぐいぐい引っ張っていく彼の背中を見ながら、ぼんやりと考える。
獄寺君の手、冷たい。あんな寒いとこでずっと待ってたんだもんな。でも、すべすべして気持ち良い。さらさら。ていうか獄寺君って本当色白いよなあ。色素薄いっていうか…、じゃなくて!!
彼は本当のところ、オレのことをどう思っているのだろうか。マフィアのボスとして尊敬して慕ってくれてるんだろうなってことはわかる。でもそれだけ?
彼の中では、オレはそれだけの存在なんだろうか。最近それが気になって仕方ない。
聞こうか、聞かまいか。
散々迷ったけど、今このタイミングで聞かなかったらもうこの先聞くことができないかもしれない、くらいな勢いでオレは思いきって口を開いた。
「あ、あのさ獄寺君…」
「はいっ何ですか?」
振り向いた獄寺君は満面の笑顔。すごく言いにくい。
「獄寺君はさ…その、オレのこと好き?」
「はい!大好きっス」
即答。そんなストレートな。言われたこっちが照れる。現に今のオレの頬は絶対朱い。