Novel

□全力中学生
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ツナに向ける笑顔の10分の1でいいから、その可愛い笑顔をオレに向けてくれたらいいのに。



全力中学生



…可愛い。

オレは隣に座って勉強する獄寺の横顔に見惚れ、頬杖をつきながらぼーっと眺めていた。
だってすげー可愛いんだもん。

勉強をする時の獄寺は、眼鏡をかけて邪魔だからと髪の毛を後ろで結ぶ。これがまた可愛いんだ。
眼鏡かけてる獄寺は、何つーかまじで頭良さそう。ギャップっつーの?普段とは違う感じがいい。
加えてこの、後ろでちょこんと結ばれた髪。女の子みてえ。がっつりじゃなくて、このちょんとした感じが可愛い。
ああ、白いうなじがキラキラ光ってる。うなじうなじ…うわー、すげえ旨そう。

「…おい、野球バカ」
「えっ…?なっ何、獄寺!!」

急に話し掛けられて意識を戻すと、目の前には思いっきり眉間に皺を寄せて不機嫌そうな表情の獄寺。
まあ、オレの前ではいつものことなんだけど。怒った顔も可愛いよなあ、獄寺。

「よだれで池作ってんじゃねえよ」
「えっ!?」

い、池!?おかしいな、オレにはそんな大規模な着工計画は…。
視線の先に目を落とすと、机の上に広げているだけだった自分の教科書に文字通り池が出来上がっていた。
つーか、溜め池?ダムだ、ダム。オレ、無意識にダム作っちゃった。意外と天才なのな。

「おおっと、悪ぃ!!」
「げっ!てめえ、10代目の大事なノートに汚えよだれ飛ばすんじゃねえよ!!」

慌てて手に持っていたタオルでダムを破壊したものの、勢いが良すぎて中身が四方八方に飛んでいってしまった。着地点を瞬時に察した獄寺は、間一髪ツナのノートを机の上から救出して大事そうに抱きしめる。
ああ、オレは今だけそのノートになりたい。

「…おい」
「んあ?」
「早く拭き取れって、気持ち悪ぃ!!」
「あー…はいはい」

言われた通りタオルで拭き取るオレを心底嫌そうな顔で見下ろす獄寺。何でこんな状況かっていうと、まあまずここはツナん家なのな。
いつものように勉強会するってことになって三人で勉強してたんだけど、ツナが急におつかい頼まれてその間二人きりって訳。

獄寺はさっきから溜め息ついてばっかだけど、オレは二人ってだけでかなり嬉しい。おかげで顔が緩みっぱなしだ。

「あーあ。ったく、何でオレがこんな奴と二人っきりで勉強を…10代目ー早く帰ってきてくださいっ」
「まあまあ」

祈るようなポーズの獄寺をにこにこと笑顔で宥めれば、獄寺の眉間に刻まれた皺が更に増えた気がした。



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