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□日記ログ
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【必殺技】


「十代目。オレ、必殺技もっと増やしたいんです」
「え?」

ゴクデラ君が唐突にこんなことを言い出したのは、あるよく晴れた日のことだった。

「どうしたらいいですかね」
「ん?えっ、なに、何が?もう一回言って」

ぼーっと空を眺めて、最近暑いなあ、なんて考えていたから、よく聞こえなかった。もしかしたら、ただの聞き間違いかもしれない。
慌てて聞き直したけど、獄寺君は今度はゆっくりとした口調で確実に、必殺技です十代目、と言った。
已然真面目な表情の彼は、ふざけている様子もない。
となると、残るは暑さで頭がやられた可能性か。

「なに、何の話。必殺技って?」
「ほら、十代目は色々かっこいいのがあるじゃないっすか。零地点突破改!とか」
「ああ、ファーストエディションとか?」
「そう、それっス!オレも何かかっこいいのがいいです」

どうやら彼が言っているのは、本当に技のことらしい。かっこいいのがいいって何だ。
キラキラとした瞳を向けられて、彼の技は何があったか、ともう一度空に視線を移す。

「獄寺君もあるじゃん。三倍ボムとか、ロケットボムとか」
「そんなダサいのじゃなくって、何かこう、もっとかっこいいヤツです。ポーズ決めたりとか」

ダサいのって、全部君が決めたんだろう。
言いかけて慌てて口をつぐんだ。こういう時の彼がややこしいのは、身を持って知っている。
何かないか、と視線をさ迷わせたオレは、あ、と手を叩いた。

「じゃあさ、ウインクとかどうかな」
「え。う、ウインクですか…?」
「こう、手はこんな感じで小指立てて、こう、キラッ!て感じ。はい、やってみて」
「こ、こうですか」

確実に両目つぶるだろうと思っていたのが結構上手だったものだから、思わず興奮して手を叩く。

「いい、いい!いけるよキラッ!」
「あの、この必殺技はどのような効果が得られるんですか」
「んー、なんか、色仕掛け?敵の目を欺く、みたいな。重大な技だよ」

なるほど、とか言いながら目の前で熱心にメモを取り始めた彼は本当に愉快だと思う。
全然かっこよくないし、どちらかといえば地味な技だけどいいのかな。よくわからない。

「後はチラリズムかな。腹チラとか」
「はあ。例えば…?」
「うーん、オレが萌えるのは、ジャンプした時にチラリと見える脇腹かな」
「こうですか?」

リクエスト通り目の前でぴょんぴょん跳んでくれる獄寺クン。たまにふわりとシャツが捲れて、白い脇腹が露になる。
思わずおお!と歓声を上げたら、獄寺君は特に嫌がるでもなく無邪気に笑った。
うん、いい子だよな。

「どーですかっ」
「あーいいかも!もっと高く跳んでみてくれる」
「こんな感じですか!」
「あー、いい!萌える!可愛い!」

いや、本当いい。オレ、実はスゴく幸せなのかもしれない。
こんな至近距離で彼の腹チラを拝めるなら、今日暑いなか学校に来た意味はあったのかもしれない。
締まりのない顔になるのを必死に抑えながら、調子に乗って今度はシャツのボタンに手をかけた。

「よし!じゃあ次はさ、ボタンをちょっと外して、こう屈んで」
「ただいまー。何やってんだ、ツナ」

物凄く楽しかった時間は、昼練から帰ってきた山本によって一瞬にして壊された。
ほんと山本空気読んでよ、と軽く舌打ちしながら、絶対明日も必殺技の特訓しよう、と誓った。



変態な十代目が書きたかったんです、すみません。



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