鳴門・短編

□親愛なる友へ
1ページ/1ページ



早3年。
月日が過ぎるのはあっという間で、彼らもとどまることを知らずどんどんと成長していた。


「誕生日くらい祝ってるのかなー…想像できないけど」

「?何のこと?」

ベンチに腰掛け、空を仰ぐ私を、隣に座っているサクラが首を傾げて問い掛けた。少し離れた場所では、ナルトと木の葉丸が“お色気の術”を見せ合って、何やら愉しげな声を上げている。時折、サクラに鋭く睨まれ、シュンとして身を縮ませる2人だが、懲りずにまたコソコソと再開していた。


「…誕生日、サスケの」


サクラの問いに、その名を出すと、サクラとナルトはほぼ同時に地面に両手をついて、聞き取れないくらい小さく低い声でブツブツと呪いを唱えるようにつぶやき始める。
ズゥーン…と暗い雰囲気を漂わせる2人に戸惑う木の葉丸は、ナルトの肩をポンポンと何度も叩いて慰めていた。
2人には禁句とされる名前だが、きっと2人も彼の誕生日を忘れはしない。

毎年、夏になると、ふと思い出す。
ああ、そう言えば、もうすぐサスケの誕生日だ。今年は届くだろうか。









 
「…サスケ君、どうしたんだい?」

歩みを止めるサスケを振り返り、カブトは短く問い掛けた。サスケの目線の先には、今し方仕留められた鳩がピクピクと体を痙攣させて、息絶えようとしていた。傍らには血に染まる一枚の紙切れ。


「―ああ、何処かの伝書鳩だね。…ただの村鳩だ、警戒しなくていい。それより早く行こう、大蛇丸様が待っている」

そう言って、カブトは歩を進める。サスケは一言も発することなく、鳩を一瞥した後カブトに続いてその場を離れた。










 
「…今年も辿り着けなかった…」

中型の伝書鳥の頭を指先で撫でて、その脚に取り付けられていた小さな筒 から一枚の紙を取り出し、クシャリと手中で丸める。


「ねぇ、ナマエ。誰に…」

そこでサクラは言葉を切った。勘のいい彼女は何かを悟って、視線を下へ落とす。


溜め息がひとつ。



(誕生日、おめでとう)

2011.7.23
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ