鳴門・短編

□ペットは飼い主に似る?
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キャンキャンと甲高く可愛らしい声で吠える赤丸。キバの頭の上にちょこんと乗っかって、尻尾を振る姿が何とも愛らしい赤丸。身体が小さいながらも、嗅覚は優れ、キバとの連携で変化も得意とする、主人に忠実な忍犬。
何度、赤丸に癒されたことか…!


それなのに。


「すくすくと育って…」

「そんなに変わるかァ?強くはなったが、別に…なぁ、赤丸?」

「ワン!!」


いやいや、赤丸の背に乗ってる時点で違うだろうに。声も、以前の高い声ではなく、身体に響く低い声で吠えているじゃないか。体もキバと同じくらい…二足歩行したらキバよりもでかいかもしれない。


「大型犬だったのか…」

「オイオイ、ナマエ!お前、いちいち細かいこと気にすんなよ!それより、オレはその袋が気になる。…さっきから良い匂いがするぜ?」
 
クンクンと鼻先を揺らして、ニヤリと笑みを浮かべるキバが指差したのは、私が手に持つビニール袋。中には大量のビーフジャーキーが入っているのだが、嗅覚が優れている彼らなら、特に好きな食べ物の匂いなら一発で分かるだろう。赤丸もクンクンとしきりに鼻で何度も匂いを嗅ぎながら、一歩一歩近付いてくる。


「安売りしてたから、2人に」「ヒャッホー!!やったな赤丸!礼を言うぜ、ナマエ!」

私が言い終わる前に、ビニール袋をかっさらって中身を取り出し始めるキバと、大きな口でビーフジャーキーを噛み締める赤丸。身軽に飛び跳ねる1人と1匹の姿を呆然と眺めてから、ゆるりと口元を緩めた。嬉しさを身体で表現する彼らを見て、つい此方も嬉しくなる。


「ワン!ワンッ!!」

「ありがとう、だってよ」

「どういたしまし、でっ!…う…お、重い赤丸…!」

 
その巨体を軽々と宙に浮かせ、そのまま全体重をかけて飛びかかってきたのを、私はうっかり受け止めて地面に背を強打した。重いし、痛いし、でも、すりすりと柔らかい毛質の顔を擦り付けてくる赤丸は、やっぱり可愛らしくて。そのまま、頭を撫でると、クゥンと小さい頃によく似た声を発して。ああ、もう、でかくても可愛い!



(…オイ、オレを忘れんじゃねーぞ!)


2011.7.7
 

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